津軽では、一家の主人は今でこそどこの家庭でも、「お父さん」か「パパ」であるが、昔は、「あや」、「おど」、少し上品に「とっちゃ」と言った。その言い方は、一応その家の格を表していたと私は思っていた。
ちなみに、分家である私の家では「とっちゃ」ではなかった。
「おど」に対して、「おが」がある。東京の子ども達は親指を「お父さん指」、人差し指を「お母さん指」などと言う。しかし、津軽では人差し指のことを「おがゆび」とは言わない。ましてや、お兄ちゃん指と称して中指のことを「おんちゃまゆび」とは決して言わない。それぞれ、「ふとさしゆび」、「ながゆび」であり、標準語とあまり変わらない。「おどゆび」を「おどごゆび」と言う地域があり、「親指」は津軽弁では男親を表現しているようだ。これを考えると、人差し指を「お母さん指」と言うのも理解できる。「こゆび」はどの国語辞典を調べても「小指」と表記されている。「親指」に対して「子指」を連想するが、こうしてパソコンで変換しても「小指」しか出てこない。津軽の一部では、「こどもゆび」と言う地域があるので、「こゆび」は「子指」をイメージして使われているのは事実である。しかし、「おやゆび」は古くは「おおゆび(大指)」であったと推定されているので、「小指」がやはり正しいのであろう。
余談になるが、薬指はその昔、水に薬を溶かすのに使われたので、このように言われるが、この指は、口紅を付ける時にも使われたことから、「紅指」あるいは「紅差し指」という別名があります。この原稿を書いている時に、「口紅を伸ばすとすれば、どの指を使う?」と家内に聞いたら、「小指」と答えました。皆さんはどの指を使いますか?やはり、その動きが色っぽいのは薬指でしょうねぇ・・・・。
第10号より