医院でのこぼれ話
伊藤キクさん(仮名、78歳女性)は、腰が曲がったため、背中は丸くなり腹は折りたたまれています。このような人は、胃液が逆流してきて胸やけを起こします。伊藤さんも逆流性食道炎のために胸やけが続いていました。そこで、前に受診した時に薬を出したのですが・・・・・
- 伊藤さん
- 「先生、胸やけの薬を下さい。」
でも、手の中の袋には前に出した薬がまだたくさん残っていました。 - 私
- 「薬、まだいっぱいあるよ。」
- 伊藤さん
- 「この薬、1回飲んだっきゃ、ぴたっと止まった。こした効ぐ薬だば、もったいなくて飲まえね。冷蔵庫さしまっておいだ。もっと欲しくて・・・・。」
- 私
- 「・・・・・???」
私が学生時代に津軽半島のある村へフィールド活動に出かけた時のことを思い出してしまいました。家庭訪問へ行った時のことです。心臓病で大学病院へ通っていた患者さんが、飲み残した薬をたくさん持っていました。なぜ飲まなかったのか聞くと、主治医の先生から、「すごく高い薬だ」と言われたので、もったいなくて飲めなかったのだそうです。飲んで初めて価値が出るのですが・・・・。
伊藤さんの続きの話がまた傑作でした。「笑い話の種になるな」、と言い残して診察室を出て行ったのです。私は、丸くなった後ろ姿に、「ニュースレターに書くからね!!」と。
ニュースレター
第52号より
第52号より