陸羯南の直筆を見ることは諦め、養生会から頂いたパンフレットの写真で我慢することにし、 二日目は、弘前市南部の狼森に出掛けました。 ここまでは歩くのは遠過ぎますので、アップルロード沿いにある大狼神社まで車で行きました。 ここから、ちょっと険しい山道を登ること15分、ただし、距離にしてたった250mのところに、 目的とする石碑がありました。陸羯南を記念したものです。 昭和28年9月に建立されたもので、一部は、風化して文字が消えて読むことができませんでした。 石碑には次のような五言絶句が刻まれています。
名山出名士 (名山名士を出す)
此語久相伝 (この語久しく相伝う)
試問巖城下 (試みに問う巖城の下)
誰人天下賢 (誰人か天下の賢)
この五言絶句は、比較的簡単で私にも解釈できる詩です。もちろん、巖城とは岩木のことです。 昔から、名山の下には名士が出る。さて、岩木山の下ではどうだろうか。 岩木山の下に生まれ育った郷里の若者たちよ、志を持って天下第一等の人物になろうではないか。 こんな意味ではないでしょうか。
あいにく曇り空で、名山、岩木山を望むことはできませんでした。 石碑は成長した杉に囲まれていましたので、きっと、天気がよくても岩木山を見ることはできないでしょう。 石碑への道は、遊歩道になっていますが、木材で作られた階段は崩れたところもあり、 落ち葉で覆われ、どこが歩道なのか分からないところもありました。 ベンチには雨に濡れた道路地図が置き忘れられていましたので、訪ねて来ている人はいるようです。 しかし、風化した刻まれた文字が53年の歴史を物語っていますが、同時に、次第に忘れ去られようとしています。
第33号より