日本の人口は2年前から減少しています。日本は外国からの移民がほとんどありませんので、死亡数と出生数の差が人口の増減となります。 平成22年の推定では、亡くなった人が119万人、生まれた赤ちゃんが107万人ですので、約12万人が減少しました。 亡くなった119万人のうち、がんで亡くなった人は35万人と予想されています。
子宮頸がん予防ワクチンの話題が新聞を賑わしています。 子宮頸癌は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であること、20歳代から発症する若い人のがんであることが特徴です。 そして、ワクチンを接種することにより、このウイルスの感染を防ぎ子宮頸癌を予防できることが分かり、注目を集めています。 どれくらいの数なのかを調べてみると、年間15,000人が子宮頸癌になり、2,500人が亡くなっているといわれています。
さて、全体として日本ではどれくらいの人がどんながんを発症し、どれくらいの人が亡くなっているのでしょうか。 国立がん研究センターのホームページに平成17年のがんの発症数と平成21年のがんでの死亡数のデータがありました。 日本はがん登録が不十分ですので、推定値しか分かりませんが、このデータはがんになった人とがんで亡くなった人がどれくらいいるのかが大体分かります。 なお、平成21年の総死亡数は117万人、がんで亡くなった人は34万人でした。
肺癌は発症数と 死亡数の差が小さい
肺癌は、グラフのえんじ色の棒が最も高いことで分かりますが、日本では最も死亡数が多いがんです。 発症数をみると、胃癌と大腸癌よりも少ないにもかかわらず死亡数は多い。発症数と死亡数の差は小さい。 つまり、肺癌と診断されると亡くなる確率が高いということです。 欧米では、30年以上前から禁煙運動が活発となり、現在は死亡数が減少しています。 しかし、日本では今も増加しているがんで、禁煙運動の成果が現れるのは何十年も後のことと予想されています。
胃癌と大腸癌は 早過ぎる死を避けることができる
1年間に胃癌は12万人、大腸癌は11万人が診断されています。 死亡数は胃癌が5万人、大腸癌が4万人です。つまり、胃癌と大腸癌ともに7万人が治療によりよくなっているということです。 外科手術が進歩した結果かも知れませんし、早期に診断されているからかも知れません。 がん検診を受診する人が増えるとさらに早期の癌が発見され、早過ぎる死を避けることができると予想されます。
肝臓癌、胆のう 癌、膵臓癌も発症数と死亡数の差が小さい
この3つは、診断されても治療がむずかしいがんです。胆のう癌と膵臓癌は特に診断がむずかしいがんです。 肝臓癌は、肝炎ウイルスの感染を原因として発症するものです。 B型肝炎ウイルスは子宮頸癌の原因となるヒトパピローマウイルスと同様にワクチンで感染を防ぐことができます。 C型肝炎ウイルスはインターフェロンで治療が可能になってきました。
子宮癌は注目さ れている割に数は少ない
子宮癌は体癌と頸癌に分けられます。このうち、HPVワクチンで予防が期待されるのが頸癌です。 ただし、全体で見ると胃癌、大腸癌、肺癌に比べると数が少なく、乳癌に比べても少ない。
乳癌と前立腺癌 は増加しています
女性で一番死亡数が多い癌は大腸癌です。 乳癌は検診で早期診断が可能ですが、外科側から見ると、自分で触れて診断される例が一番多いようです。 乳がん検診を受けると、より早期の乳癌が発見され死亡する数が少なくなることが期待できます。 前立腺癌は増加していますが、診断しても死亡には結びつかない過剰診断が問題になってきています。
がん検診で「よ り早期の癌」を見つけ、「早過ぎる死」を避ける
こうして見てくると、私が関係する消化器癌は、がん検診で早期発見することで、死亡数をさらに減らすことが可能であることが分かります。 ぜひ、がん検診をきちんと受けて、「より早期の癌」を見つけ出し、「早過ぎる死」を迎えないようにしましょう。
第62号より