医療といえどもお金がなければ成り立ちません。最近、医療のための財源の確保が大きな問題となっています。医療費が増大してきた最大の理由は高齢者が増えたためです。老人は若い人に比べて病気がちなのは当然のことです。老人の数がこれからますます増えるわけですから、医療費がさらに必要になることは何よりも明らかなことです。
最近は日本の経済成長率はマイナスとなり、リストラなどにより健康保険料を払う労働者の数が減少しています。その上、給料のカットなどもあり、医療費の基になる健康保険組合の収入が減っています。つまり、経済成長率よりも医療費の伸びの方が大きいために、医療費の捻出が大変困難になり、医療費支払いのためのお金がなくなってきているのです。医療費の支払いのためのお金が足りなくなりますので、①保険料を高くすること、②患者の自己負担額を多くすること、③病院の診療報酬を低くすること、などの対策が取られてきています。
さて、日本の医療は世界(OECD諸国)と比べるとどんな違いがあるのでしょうか?①ベッド数は世界の国々に比べ2~3倍であり、②患者1人あたりの職員数は1/2~1/3、③入院日数は3~5倍、と言われています。外国と医療のレベルを比較した場合に、日本の医療は量は大きいが質が悪く、効率が悪いということです。
さて、世論調査では医療施設の対応で欠けているものとして、①親切さ、②素早さ、③安全さ、の三つが挙げられています。医療従事者とすれば、できるだけ親切にし、待たせることなくすばやく処置をし、なおかつ、医療事故が起こらないようにいつも努力しているわけですから、世論調査から得られた結果との間にはギャップを感ずるのは当然です。
これらに共通しているわが国の最大の問題は、「人手不足」です。人手があれば、いつでも親切にできますし、すばやく対応してやることができます。余裕があれば医療事故に対する注意を払う余裕もできます。人手不足を解消するために、どのような対策が考えられているのでしょうか。医師、看護婦など医療従事者の養成数は外国に比べ少なくはありません。世界と比べて大きな違いは、入院ベッド数が多いことと、外来受診患者数が多いことです。これらのことから、医療の効率を上げることで人手不足を解決しようとしています。つまり、ベッド数を減らして入院患者数を減らし、病院にかかりにくくすることで外来患者数が減りますので、相対的に人手不足が解消されるというのです。
以上のように、世界に比べてベッド数が多く、入院日数が多いので、日本は無駄なところにお金を使っていると言われています。しかし、例えば、胃がんの手術をして満足に食べられないのに退院すると、本人の肉体的な負担、家族の負担は大きいものがあります。つまり、病院の効率化を図ると、誰かに負担がかかります。病院にかかりにくくすると、市販薬で間に合わせるか、我慢するかしかありません。ベッド数を半分にし、入院日数を短くしても、これは病院の負担は軽くなりますが、患者さんと家族の負担は増えることになります。医療費の削減ということは、国民に負担をしてもらうということです。
医療資源といえども限りがありますので、無駄に使っていいはずがありません。効率的に使わなければなりません。しかし、入院ベッド数を減らして入院できないようにし、自己負担を増やして外来に受診できないようにしようとする現在の政策には私は反対です。国内総生産に占める、医療費の割合は、日本は最低の部類です。つまり、世界に比べて日本の医療費はまだまだ安いのです。皆さんは、現在の医療改革に対して、どのようにお考えになりますか?
第8号より