社会保険庁は、平成18年度の国民年金保険料納付率が66.3%になったと発表しました。 この結果、同庁が掲げた目標値(74.5%)には遠く及ばず、最終目標である「19年度に80%」の実現は絶望的で、 国民の年金不信はさらに高まりそうだという。
さらに、新聞の報道では、「免除されている人も計算に入れると、平成18年度の国民年金保険料の実質納付率が49.0%となり、 初めて5割を切ったことが社会保険庁の調べで明らかになりました。 全加入者で見た場合、保険料を払っているのは2人に1人いないことになり、 国民年金の空洞化が一層進んでいることが裏付けられた。」と、しきりに不安をあおっている感じがします。
でも、この報道は私の実感と全く違います。私の町内の人、親戚の人、学生時代からの友人、仕事仲間、 この中で年金保険料を払っていない人はほぼゼロです。確実に払っていないのは、私の娘だけです。 3月まで県職員でしたが4月から大学院生になり、国民年金に加入する必要がありますが、その手続きをしていませんでした。 これで保険料を払っていない人が2人に1人というのは、信じられません。
納付率ではなく、人数で確認してみました。すると、平成18年度の「国民年金加入者」は2,123万人だそうです。 このうち未納者は322万人だが、未納とは別に、所得が低く保険料を免除されている人が320万人、 猶予されている人が208万人いるのだそうです。国民年金加入者2,123万人という数字の実態は何なのか。 調べてみると、日本全体で年金保険料を払うべき人は約7,000万人でした。 「厚生年金」と「共済年金」に加入している人が約3,800万人、その被扶養配偶者(3号被保険者といわれる)が約1.100万人です。
『国民年金』というと、国民みんなが加入している年金と誤解されそうです。 話題になっている国民年金は自営業者や二十歳以上の学生、アルバイトの人などが加入している、 いわゆる1号被保険者のことです。 つまり、この66.3%数字は、日本全体で年金保険料を払うべき約7,000万人のなかでの納付している人の割合ではなく、 その7,000万人の中から「厚生年金」と「共済年金」加入者約3,800万人とその被扶養配偶者約1.100万人を引いた、 1号被保険者の国民年金の人約2,100万人の中でどのくらい納付しているかという割合です。
さて、国民年金加入者2、123万人から免除者と猶予者を除くと1,595万人になります。 この数字を使って未納率33.7%から計算すると未納者は538万人となります。 あれ? 未納者は322万人と発表になっているのにどうして? と考えてしまいます。
そこで、またまた調べてみると、「納付率」というのは、 加入者が実際に納めた保険料の月数を本来納めるべき保険料の「月数」で割ったものだという。 つまり、年金保険料を払うべき人のうちの年金保険料を納めている「人」の割合ではないのです。 これで、納付率から未納者を計算で出しても、公表されている数字と違っても不思議ではないことが分かりました。 また、時効前(納期から2年以内)に過去の保険料を納めるケースが増え、最終的に3~5%の人が追加して納めているようです。 私の娘も手続きをして払いましたので、こんな場合をいうのでしょう。 この結果、納めるべき人が納めた納付率は70%を超えていることになります。
これで私の実感と新聞報道の違いが理解できました。年金に関する新聞報道は、 『国民年金だけの納付状況であって、厚生年金や共済年金を含めた日本全体での年金の納付率を表しているのではないこと』と、 『納付月数で計算した割合であって、国民年金の保険料を実際に支払っている人の割合ではないこと』、 をしっかり認識しておく必要があります。
さて、話は最終章に入ります。約7,000万人のうち、年金保険料を払っていない人は、 322万人だということが分かりました。全体からみると約5%です。 「本来納められるべき金額」と、「実際に納められた金額」の差は、全保険料収入の4%に過ぎないのだそうです。 年金は空洞化して将来もらえないと判断して未納のままでいては、65歳になった時に、 周りのほとんどの人は年金をもらっているという現実に直面しそうです。 年金保険料を払っていない人は、「年金はすでに空洞化している」のかどうかをきちんと理解して判断すべきです。
でも、疑問が残ります。たった5%の未納者でどうして年金は空洞化するのでしょうか。 未納であれば年金を払う必要がないし、基礎年金の3分の1は税金から繰り入れているわけですから、 未納者がいると、税金の繰入額がその分少なくなり、むしろ国の負担は少なくなります。 このあたりをもう少し調べてみます。年金をもらう前に病気やケガで働けなくなった時は障害年金という制度もあります。 年金保険料は払った方が将来のためのようです。
第42号より