どうも私は新しい機能がついた内視鏡がでると手に入れて使ってみたくなります。 昨年は、NBIという特殊な光が使えるシステムに変更しました。これは食道癌の診断を目的にしたものです。 食道癌は、診断した段階で進行している場合が多く、必然的に大きな手術になり、患者さんの負担は大変なものです。 このシステムを使うことで、通常の方法では見逃してしまいそうな食道癌をより早期に診断して患者さんの負担を少なくしたいと考えて始めました。
そして、その成果がさっそく現れました。 多分、通常の光を利用したこれまでの方法では見逃したかも知れないという段階の食道癌を、NBIを使うことで診断できたのです。 できれば内視鏡手術でと思ったのですが、大学病院で詳しく検査をした結果、内視鏡手術では再発の可能性が否定できないので、手術をすることになりました。
実は、この患者さんの内視鏡検査をしている時に私はゾッとしました。 「NBIに変えていなければ、この患者さんの食道癌を見逃したかも知れない・・・・。」と思ったからです。 1年後の検査で明らかな食道癌が見つかった場合、1年間もそのままにしたことになり、外科手術をしても再発する可能性があるからです。 胃や食道の内視鏡検査では、微妙な変化に気づかなければ早期の癌を診断できません。 私が大学を卒業した頃と比べると、今の内視鏡画像の解析度は比べものになりません。より診断能力を向上させるために、いろいろな技術が使われています。
さて、今度は大腸内視鏡です。昨年は230人の大腸内視鏡検査を行いました。 その中で、目的の場所まで内視鏡を入れることができなかった人が10人程度います。 それ以上入れようとすると痛いからです。どうしても入れる必要があって、そのまま別の医院へ移して検査をしてもらったこともありました。 この10人をゼロにするために、新しく開発された大腸内視鏡を購入しました。 大腸内視鏡検査は目的の場所まで入れることがまず前提ですので、私自身の技術で無理であれば、新しい機能を持った内視鏡に頼るしかありません。
胃内視鏡検査の挿入方法は医師による差は少ないのですが、大腸は長さや位置が個人により違うためか、 大腸内視鏡挿入方法は医師により千差万別です。 私自身のことを考えてみても、大腸内視鏡の長さや硬さなどが異なると挿入方法を変えてきました。 2年前に炭酸ガスを使う方法を導入することでも、やり方が少し変わりました。
新しく使い始めた大腸内視鏡は、細く軟らかいもので、痛みが少なく深く入れることができるタイプです。 やせた女性で、大腸が長~い人に威力を発揮しそうです。 ただ、軟らか過ぎるために、がっしりした男性であれば、現在使用中の内視鏡の方が楽に出来そうだと思うこともあります。 以前はポリープを切り取ったりしていましたが、今は診断だけを行うようにしていますので、この内視鏡を使い慣れて、 安全で痛みが少ない大腸内視鏡検査を行いたいと思っています。
第61号より