私はよく、「先生は、こんなに忙しく仕事をしていて、どのようにしてストレスを解消しているのですか?」、「お酒もたばこもやらずに、何を楽しみにしているのですか?」、などという質問を受けます。でも、ちょっと逆に突っ込みを入れたくなります。患者さんが来てくれなくて、暇を持て余している時の方がストレスに感じるだろうし、お酒を飲むと本も読めなくなるし、たばこを吸って体を壊した人をたくさん知っています。
私は仕事をしていて、ストレスに感ずることがほとんどありません。趣味と仕事が一緒になった幸せな人間なのかなと自分なりに解釈しています。ずっと患者さんを診察していても、自分を頼りにしている人たちがこんなにもいるのかと思うと、全くストレスにならず、むしろ、仕事にやりがいに感じています。夜中に起こされても、人が苦しんでいるのを助けてやることは、医師として当然のことだと思います。患者さんの病気について分からないことがあっても、それを調べて新しいことを知るということがすごく楽しいので、これもストレスになりません。
一人で開業していると、遠くへ出かけた時に入院患者さんのことが気にかかります。医師会の仕事で東京へ出かけることが多くなりました。外来診察は、先輩の木村あさの先生にお願いすることが大部分ですが、夜中はちょっと大変ですので、ここまではお願いしていません。最近は、公務員に対して風当たりが強いので、公的病院に勤務する医師に気軽に頼めなくなりました。何かの機会に、迷惑をかけることが起こらないとも限りません。昨年4月に内科医の長男が弘前へ帰ってきましたので、時々留守番を頼んでいます。ストレスがあるといえば、このあたりでしょうか。
医療崩壊という言葉が新聞を賑わしていますが、医師だけでなく患者さんにとっても不幸な時代になったものです。医師の労働状況が悪化していることは確かでしょうが、それは昔もあまり変わらなかったことだと思います。過重労働というネガティブな面が強調されていますが、医師という仕事はすばらしい仕事だと思います。若い医師には、このやりがいのある満たされた気持ちを経験して欲しいし、多くの高校生が医師を目指して欲しいと思っています。
医師の中には、「こんな状況では自分の子どもは医師にしたくない」という人がいます。しかし、私はそうは思いません。子どもに自分と同じ職業について欲しいと思える親は幸せだと思います。私の子どもたちも医師や歯科医師になりましたが、学校の先生、床屋さんも親と同じ職業の人が少なくないと感じています。やりがいのある仕事だと思えば、過重労働だろうがなんだろうが、ストレスと感ずることはないと思います。
生きている中で、もっとも多くの時間を費やす仕事がストレスになる状況でないことは幸いです。しかし、本を読んだり、音楽を聴いたりする時間がないことが残念です。ゆっくり音楽を聴いていると、自分の精神状態が「軟らかくなる」ような気がしますので、このような時間を確保したいと思っています。やっぱり、ストレスがあるのかなぁ・・・・。
第51号より