弘前市には保険証がない家庭が1,044世帯あるのだそうです。 私の医院でも保険証がないために受診せず亡くなった患者さんがいました。 私はこの患者さんのことを知るまで、保険証がなくて病院を受診できないという例を知りませんでした。 その患者さんは、糖尿病と肝臓病で通院している患者さんでした。 弘前市国保の保険料が払えなかったために保険証をもらえず、病気の治療を中断していました。 その上、借りていたアパートは建替えのため取り壊しとなり、新しいアパートはお金がないために借りられず、 奥さんと二人で仕事場に寝泊りしていたようです。 肝臓病が進行し、息苦しくなったため私に電話してきました。ゼーゼーして苦しそうでしたので、すぐに入院させました。 しかし、病気はどんどん進行し亡くなりました。
いろいろな事情があったのでしょうが、保険証がないために受診できず、 病気が進行して亡くなるということが実際に起こりました。 市役所の人は法律に従って仕事を進めているだけで、何も悪いことをしている訳ではありません。 経済的に豊かになるとともに、ビジネスの世界を中心に個人の自己責任を求める欧米流の考えかたが広がりました。 保険証を持てなくなったというのは、日本的な仲間内の関係を重視した人間関係が薄れてきたことが一つの原因かも知れません。
ニュースレター
第49号より
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