生きていくための基本である医療費を削減するのですから、当然のことかも知れませんが、 教育に対する予算も少ないのが日本の現状です。 国際的な医療費の比較に、国内総生産(GDP)に対して何%かという数字を使いますが、 教育費もGDP比で比較すると、先進国では最低クラスです。 その教育費の中で、特に図書費について日頃感じていることを書きます。
学校図書館の標準的な蔵書の数は、その学校の学級数などに応じて整備するように「学校図書館図書標準」で定められています。 この標準を達成している学校の割合は、青森県内の中学校は12%で全国最下位、 小学校でも19%でワースト4位だそうです。 1校当たりの年間平均図書購入額も青森県の小学校は全国最下位、中学校はワースト2位とのことです。 つまり、青森県の年間の図書の整備と図書費に関しては全国的にみると最低グループだということです。
図書購入費は、平成17年から年額200億円、5年間で総額1000億を地方交付税で手当てしていることになっているとのことです。 新聞によると、平成19年度に青森県には3億3千万円が交付されていることになっていますが、 予算化されたのは1億2千7百万円とのことです。 これは、地方交付税はまとめて配分を受けるため、使途は限定されないためです。 つまり、配分された交付金をどのように使うかは市町村に任されているのです。 医療費も低く抑えられている世の中ですので、当然、学校図書は優先順位が低く、 本来図書に使われるべきお金が別の用途に向けられているのが実状のようです。
私は機会あるごとに小学校や中学校の図書室を見せてもらっていますが、非常に貧弱なものです。 それも、まるで博物館にでも置いた方がいいような、歴史的な意味しか持たない本がたくさん並べられています。 活字離れが言われて久しく、インターネットやテレビゲームなどが広まるにしたがい、益々本から遠ざかるのが最近の流れです。 学校の図書室がこの様では、子どもたちは本を手にして読むだろうか?
人は言葉を手に入れました。そして、私たちは言葉を使っていろいろなことを思考し、自分の考えをまとめることができます。 そして、言葉を使って他の人たちに自分の思いを伝えることができます。 本を読むということは言葉を豊かにし、さらに深く考えることを可能にします。 人には感性があり、生まれながらにして言葉に敏感な人がいます。 しかし、大部分の人は本を読まなければ、薄っぺらな言語能力しか得られないと思います。
また、人間を成長させるのは「人との出会い」であり、「経験」です。 人は経験を積み重ねることにより、他人の気持ちを察し、痛みを感じて成長して行きます。 本との出会いは、人と人との出会いと同じです。 「人との出会い」は限りがありますが、本を読むことで時間と空間を越えて多くの人と会うことが可能です。 そして、本を読むことで「自分以外の経験」を経験することができます。 つまり、読書をしない人は人生の出会いと経験を失っていることになります。
このように考えると、小学校から中学校にかけての心が敏感な時代に、本に接することは非常に大切なことだと思っています。 本を読むことで日本語能力を発達させ、その後の人生を豊かなものにするために 学校図書をもっと充実させる必要があると思っています。
ちなみに、国民医療費は約30兆円、教育費はこの半分ですから15兆円です。 パチンコ産業は医療と同じ規模と言われていますので30兆円。 どのような基準で算定しているかは知りませんが、 将来の日本を担う子どもたちにかかる費用がパチンコ産業の半分だとは・・・・。皆さん、どう思いますか?
第45号より