世の中が複雑になり、私自身も年をとってくると、 他の人たちは何に幸せを感じて生きているのかなぁと考えることがあります。 私が小さい頃は、半袖の下に長袖のシャツを着ていると、「バカじゃないのか」、と言われました。 破けたズボンを好きではく人はいませんでした。 今は、半袖の下に長袖を着ていますし、スカートの下にズボンもはいています。 破れて肌が見えるジーンズは、着ているうちに破けたものではなく、初めから破れたのを買って来たのだそうです。 人の価値観っていろいろですね。
アメリカ大リーグで活躍するイチロー選手が、インタビューで答える時の言葉は他の野球選手と違っています。 イチローの口からは、「あの場面でヒットを上手く打ててよかった」、とか、 「バットの真芯でとらえたホームランだった」、などという言葉はほとんど出てきません。 ヒット数の大リーグ記録を作りましたが、ヒットの多さもアピールしません。 どんな場合もコメントはいつも、「自分の中では納得しています」、です。 例えば、ヒットが出ずに苦しんでいて凡打に終わっても、何かのきっかけをつかんでいれば、 「あの一打は、自分の中では納得しています」、ということが多いと思います。 表面に現れる結果よりも、自分が納得できたかどうかを大切にし、 それを心のよりどころにしているのだろうと私は思っています。
他人に認められることは、何かを行う場合の非常に大きな動機になります。 子どもが何か失敗すると叱ることが多いと思いますが、 子どもは大人に褒められることでやる気を起こすものです。 仕事も他人に認められ、褒められることが、大きな励みになります。 軍隊や警察の組織がどんなものか私には詳しくは分かりませんが、 やたらと勲章や賞状が多いところをみると、危険な任務を遂行するためにも、 やはり褒めて認めてやることが大切なことなのだと思います。
子どもは大人が褒めてやる必要がありますが、大人は自分で自分を評価するものだと思います。 それなりの目標を立てて、目に見える成果で評価するのが最も簡単ですが、 自分の心の中で評価するのがもっと大切なことだと思います。 価値観はそれぞれ違いますし、例え自己満足だと評価されようが、 自分が納得することが最も大切なことだからです。 自分が納得できれば、自然に目に見える成果も上がると思います。 イチローのコメントがこれを教えています。
他の人から見れば幸せに見えても、心の中ではちっとも幸せに感じていないこともあるし、 苦労していると見えても、充実感でいっぱいのこともあります。 私の家には、相田みつをのカレンダーや色紙が掛かっていますが、その中に、 『幸せは、いつも自分の心が決める。』というのがありました。これが一番大切ですね。 でも、自分は幸せに感じても、他人に不快感を与えるような行動は間違っていると思います。 これも、年寄りになった証拠かな。
第26号より