今年も弘前四中の職場体験で3人の中学生が来ました。病院での職場体験を選んだだけあって将来は医療関係で働きたいようです。 小山内竣哉君、木村梨乃さん、佐藤こころさんの3人です。
始まる前は、大きな声を出すことを目標の一つにしていましたが、 何せ慣れない場所で初めての体験ばかりの状態では声がなかなか出てこないのは当然です。
最後の話し合いで3人に共通していたことは、病院で働いている人に対して持っていたイメージと、 実際に体験してからのイメージがかなり違っていたことです。 小山内君は、医師は患者さんを診察して検査をし、さらに薬を出すことを一人でやっていると思っていたようです。 ところが私は診察はしますが、後のことはできるだけ他の人たちがやるようにしていますので、小山内君にはちょっと驚きだったようです。 病院では医師一人では何もできず、看護師を初めとしたたくさんの人たちの協力で成り立っていることが分かったようです。
佐藤さんも木村さんも似たような印象を持ったようです。 事務の人がどの薬がどの病気の時に使うのかということを知っているのにびっくりしていました。 患者さんが病院でお金を払うのはかかった費用の3割で、残りの7割は健康保険組合が払ってくれるので、 事務職員はそれを請求する大事な仕事をしています。 沢田内科医院は小さい医院ですので、誰がどの仕事をするということが決まっていません。 看護師は検査もしますし、指示に従って薬局で薬の調合もします。そして受付で事務の仕事もします。 検査技師も検査だけでなく薬局で仕事をしますし、パソコンを使って医療事務の仕事もします。 大きな病院と違って、狭い範囲の仕事だけをしていてはうまく進まないからです。
中学校2年生が将来の職業をイメージするのはむずかしいでしょう。 ただ、医療機関に限らず仕事をする時は、相手の人が何を求めているのかしっかり聞き出さなければなりません。 慣れない場所ですからあまり声が出ませんでしたが、自分の思いをしっかり日本語で表せること、 相手が言いたいことをこちらがうまく聞き出すこと、このためにはコミュニケーション力が大事だということを強調しました。
今回は、私自身が非常に忙しくて3人とかかわる時間が少なかったのが残念でした。そのために、笑顔を作ってもらうのに4日もかかりました。 学校から出された、「人はなぜ働くのだろう」という重い課題に対しての答えは、「生きがいを見つけたい」、 「人の役に立ちたい」など模範的なものでした。この問いに対して正解はありません。それぞれが違っていて当たり前です。 でも、やはり自分や家族が生活していくために、お金を得るという現実的なことをもっと強調していいと思いました。 毎日の生活が第一なので、まず働いてみましょうと。医院の経営に関しても、 収入がなくて経営が成り立たなければどんな理想を掲げようともそれは実行できません。『恒産なければ恒心なし』といいますから。
第64号より