アメリカでは初めて黒人の大統領が誕生します。アメリカの政党政治に詳しいわけではありませんが、厳しい競争を勝ち抜いて当選したオバマ次期大統領には、これまで競争相手だった政治家も協力するようです。日本の状況とは大変違います。どこかの総理大臣の捨てセリフではありませんが、「私はあなたとは違うんです」と言いたい位です。
さて、わが日本の状況を考えて見ましょう。不人気だった福田首相に代わって登場した麻生首相は、就任から何ヶ月も経っていませんが、早くもその人気は失速気味です。ここ10年の状況を見ると、日本の首相は誰がなっても変わらないのではないかと思います。その理由は、政策を実現するための政党が、政治家個人が選挙で勝つための政党になってしまったからだと思うからです。
政党の党首として、日本の首相として選んだからには、党首として、首相として権威を保てるように支えることが選んだ人たちの責任だと思います。しかし、最近の日本は違います。自分が国会議員として生きて行く最低条件である選挙の顔にならないと分かると、首相としての権威をけなすような態度を取り始めます。政策を議論する過程で鍛えられて党首としてふさわしいから選ぶのではなく、選挙で大衆受けする人気で選んでいるからこのようなことになるのでしょう。
未曾有を「みぞうゆ」、詳細を「ようさい」と読んだので、漢字が読めない首相と報道されていますが、この記事を読んで首相を支える人が誰もいないのだと私は思いました。首相の所信表明演説の原稿を首相自身が書いているとは思っていません。あのようないろいろな分野の細かいことを一人の人が把握しているとはとても思えないからです。
確認したわけではありませんが、未曾有と詳細を「みぞうゆ」と「ようさい」と『間違って読んだ』のではないと思います。私は、麻生首相は、「みぞうゆ」と「ようさい」と『覚えていた』のだと思います。所信表明演説をぶっつけ本番で読むことはないでしょう。何回か読み込んでいると思います。漢字を読めないのであれば、この時点で調べています。多分、これら以外にも覚え間違いがたくさんあるのだと思います。そして、官僚を含めて麻生首相の周りの人は、覚え間違いを知っていたのだと思います。支える気持ちがないから、所信表明演説の原稿に正しいふりがなを振ってやらなかった結果だと思います。もちろん、何年も付き合いのある新聞記者も、『漢字読めない』麻生首相であることを知っていて、この機会に記事にしたのだと思います。
医学用語で、体の状態が悪くなることを「増悪(ぞうあく)する」と言います。 医学用語ではありませんが、憎むことを「憎悪」と言います。 研究会や学会の講演を聴いていると、「増悪する」を「ぞうおする」と読む医師がたまにいます。 麻生首相がいう常識を欠いている医師です。 これは、漢字を読めないのではなく、麻生首相と同じように間違えて覚えてしまっているのです。 そして、不幸にも、それを指摘してやる人が周りにいないということです。
政治家は、世襲や人気、大衆受けすることで選ばれるのではなく、政策を議論することで鍛えられて偉くなって欲しいものです。 医師は常識を欠く人が多いそうですが、最近の政治家に失望し、個人的見解を書きました。
第49号より