昨年11月に発行したニュースレター6号(ホームページでは 医院のひとこま 2002.1.18)で、お酒で体をこわしたおじいちゃん達のことを書いたところ、通院しているお酒が好きな人の奥さんからコメントをいただきました。Iさんとしておきます。Iさんのご主人は入院したことはありませんが、慢性肝炎で治療していながら、大好きなお酒を止めることができないでいました。もちろん、Iさんのご主人はきちんと通院しているのを見ても分かるように、お酒が肝臓に悪いことは重々承知です。ちなみに、Iさんご一家は、息子さんご夫婦、お孫さん二人も私の医院を受診してくれるご家族です。

Iさんは、診察室に入ってくるなり、「先生、お酒を飲むあのおじいちゃん達のことは間違っています!!」と言い出しました。私は、多少書き残した気になることがありましたので、すぐさま、 「Iさん、分かっています。家では言うことを聞かないのに、外面(ガイメンではなく、ソトヅラと読んで下さい)がいいということでしょう。」と言うと、「そうです。」と。

お酒を飲まない時は、人のいいおじいちゃん達ですが、長年連れ添った奥さん達には大変な苦労があるようです。毎日の晩酌程度であればいいのですが、ちょっと度を過ごしてしまい、朝から飲む人もいます。Iさんのご主人は、体を心配する奥さんの注意を聞かない程度で、家庭を壊すなどということではありません。しかし、中には、ご家族が、肉体的にも精神的にも大変なご苦労をされている人もいます。でも、何回も書きますが、このようにお酒を飲む人も、病院へ来るといいおじいちゃんなのです。それと同時に、その両面を見ている奥さん方からすると、私が書いたような内容には納得できないということも理解できます。

病棟を回診していると、 「先生、お酒は百薬の長というでしょう。 少しは飲んでもいいということですね。」と言われることがあります。私は、「確かに百薬の長ですけど、それは、肝臓が何ともない人にとっての話で、皆さんにとっては毒です!!」といつも答えます。入院するくらい飲み過ぎる人は、お酒を減らすように話しても何ヶ月かすると元に戻ってしまいますので、止めるように指導しています。しかし、現実は・・・・。

お酒は、本人にとって悪いだけでなく、周りのご家族にとっても大変なことになるのだということは、本人も分かっています。でも、ある一線を越えると、本人もどうしようもなくなるようです。お酒自体が全て体に悪いわけではありません。 しかし、B型肝炎とC型肝炎ウイルスがある人はお酒は禁止です。肝炎ウイルスがなくても、肝臓を壊してドクターストップがかかった人も禁止です。体を壊していなくても、アルコール中毒になるような飲み方をするような人は家庭を壊しますので、これも禁止です。