「フレイル(Frailty)」は、平成26年に日本老年医学会が提唱した概念で、「高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)」のことを言います。高齢者が介護が必要になる時は、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下など健康障害を起こしやすい状態を経ることが多いということが分かりました。この状態を「フレイル」と呼んでいるのです。
フレイルには筋力低下から起きる「身体的フレイル」だけでなく、認知機能の低下やうつから起きる「精神・心理的フレイル」、歯や口の衰えから起きる「オーラルフレイル」、独居や閉じこもりなど「社会的フレイル」などがあり、高齢者が陥りやすい心身の虚弱を多面的に表した概念です。
このフレイルには適切に対処することにより要介護状態になるのを防ぎ、再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれています。つまり、フレイルから健常な状態に戻るという可能性がある概念で、逆に、フレイルを放置しておくと、要介護状態になるということです。
社会とのつながりを失うことがフレイルの最初の入口です。栄養(食・口腔機能)・運動・社会参加の3つが大切です。バランスの良い食事で口腔機能を保ち、ちょっとした運動でも継続して行い、友だちとのおしゃべりなど自分に合った社会活動をすることがフレイル予防につながります。
高齢者はちょい太でいい!!
メタボという言葉を知らない人は少ないと思います。生活習慣病などの発症と強く関連するメタボリックシンドロームを予防するため、中年の頃から減量を意識するよう促され、高齢になっても、体重を少しでも落とさなければと考える人は少なくありません。メタボを中心に行われてきたこれまでの研究では、肥満の人だけでなく、やせの人も正常の体格の人に比べて死亡率が高いことが分かっていました。
一方、高齢者を対象にした追跡調査の結果では、肥満の人とそうでない人との間に生存率の差がないことが分かりました。つまり、高齢者では太っているから死亡率が高いというわけではないのです。しかし、高度の肥満はカロリー制限が必要ですが、肥満の高齢者はどの時期までカロリー制限を行うのか、いつからフレイル予防のためにしっかりとカロリーを摂る方がいいのか、はっきりした見解がないのが現状です。75歳前の前期高齢者はメタボ予防からフレイル予防に切り替える時期ですが、個人差が大きいので、対応は慎重に考えなければなりません。
結論です。高齢期は、中年期以前とは異なり、ちょい太の方が良いことが分かってきました。高齢者は、「メタボ対策」よりも、しっかり食べて栄養状態を保つ「フレイル予防」が重要だということです。
(葛谷雅文:医事新報から引用)
第114号より