政治と金の問題は、政権が交代しても同じでした。元々自民党だった人たちが大部分ですので、期待する方が甘かったのでしょう。「法に触れるようなことはしていません」、政治家が釈明によく使う言葉で、これまで何回も耳にしてきましたが、また、同じことが繰り返されています。「違法でなければ良いではないか」と言いたいのでしょうが、違法や合法の問題ではなく、政治と金の問題は、倫理性が問われているのです。
「法に触れるようなことはしていません」という言葉を聞くと、私には、「倫理的には問題あるが、」という言葉を故意に省略しているように聞こえます。つまり、「倫理的に問題はあるが、法に触れるようなことではないので良いではないか」と言っていると聞こえます。多分、高校時代だと思いますが、私は「法は最低限の道徳」だと教わりました。これは、現在の常識的な考え方ではないでしょうか。つまり、法は最低限の道徳を定めたものですから、法も道徳の一部だということです。
混乱するかもしれませんが、「倫理的に問題あるが、法には触れない」という言葉は、理論的には「非道徳的な法」があるということです。「法に触れるようなことはしていません」という言葉に違和感を感ずるのは、「法は最低限の道徳」であるということ矛盾するためだと思います。立法を仕事とする政治家が、「非道徳的な法」の存在を前提にして釈明するのですから、違和感がますます強くなります。
「違法でなければ」を口にする人は、政界でも全体のごく一部だと信じています。多くの政治家は倫理的にも優れた人たちだと思いますし、そうでなければ困ります。倫理的に問題のある一部の人を放置し、政界に自浄作用が無ければ、政治家が信用されなくなるのは当然のことです。現在の政治不信はここにあると思います。自浄作用以外には、政治不信を回復する手段はないと思います。
昨年の政権交代は、民主党の政策に賛同して投票したというよりも、これまでの政策に不満がある人たちが、民主党の「お手並み拝見」という程度で投票したのが実際ではないでしょうか。二大政党といっても、社会主義や共産主義政党と保守党というのではなく、元々、同じ政党に属していた政治家が二手に分かれただけで、昔の自民党の派閥間での主導権争いに、旧野党系の政治家がちょっと加わっただけのような気がします。
それにしても、母親から4億円ものお金が贈与されていたのを知らなかったという総理大臣、自分の周囲で少なくとも12億円ものお金が動いて政治資金規正法違反と問われているのに、「形式的ミス」だという政権党の幹事長、このような政治家に日本の政治を任せておいていいのだろうか?
第56号より