歯科といえば、歯を削って詰める、歯茎を手術するなど、外科に属するものと思っていました。 事実、弘大附属病院にも『口腔外科』があります。これに対して、『口腔内科医』という言葉を見つけました。 ちなみに、口腔は「こうくう」と読みます。 国語辞典を引くと、「こうこう」と読むとなっていますが、医学関係者の間では「こうくう」と言っています。
歯が痛くなったり、沁みたりして、虫歯になったかと思えば歯科医院へ行くというのがこれまでのパターンです。 これだと、歯を削って治すしか方法がありません。抜歯する最大の原因は虫歯なのだそうです。 虫歯は削って治療しますが、再び虫歯になると削ります。 これを繰り返していると、最終的には抜歯するしかなくなります。
『口腔内科医』は、これまでの外科的な治療ではなく、 虫歯や歯周病の原因となる細菌を除去して歯の脱落を予防したり、 睡眠時無呼吸症候群を内科的な方法で治療しようとするものです。 まだ一般的な呼び名ではありませんが、現在の歯学部の中では予防歯科に近いものでしょうか。 歯科には、『8020運動』というのがあります。 80歳になっても自分の歯を20本残し、健康な生活を送りましょうという運動です。 虫歯を治していては、これを達成することはできません。『口腔内科医』の役割は、ここにあるのだと思います。
削って詰めるのは進行した虫歯にとどめ、 初期の虫歯は歯垢を取り除いて細菌を減らすことで進行を食い止めるのが理想です。 しかし、現在の歯科の診療報酬制度は、削って詰める外科的な治療でないと収入に結びつかないようです。 歯科医が、『口腔内科医』としても十分に成り立つような診療報酬制度となり、 私たちも虫歯や歯周病にならないように、定期的なチェックを受けて、健康な歯を持ち続けるようにしたいものです。
虫歯はミュータンス菌やラクトバチルス菌などの感染が原因だということは分かっています。 歯周病も細菌感染による炎症性疾患です。これらの細菌は歯に付着した歯垢の中で増殖します。 歯垢が歯石になってしまうと、日常の歯磨きでは取り除くことはできず、歯科医院で取ってもらう必要があります。
ちなみに、虫歯の原因となるミュータンス菌は、親から赤ちゃんへの感染が原因なのだそうです。 3歳頃までに感染するので、感染を予防するためには、いくら赤ちゃんが可愛くても、 口移しで食べ物を与えたりしないのが大切です。 また、自分の子どもを虫歯にしたくなかったら、自分はもちろんですが、 家族全員が口の中のミュータンス菌をなくすように努力することが大事です。
そのためには、「歯磨き」が必要です。歯磨きは、生まれて最初に身に付ける健康を守る基本行動です。 歯磨きを単なる生活習慣とせず、 自分の健康を守るための保健行動なのだと認識することが大事ではないかと思います。 歯磨きをして、自分の健康を守るという意識を、子どものうちから身につけることで、 大人になった時の、高血圧症、糖尿病、高脂血症など生活習慣病に対する認識に結び付けられないかと 最近考えています。
あまり難しいことを考えずに、まずは、自分の歯をできるだけ長持ちさせるために、 歯科医院を受診してチェックしてもらいましょう。 そして、虫歯の早期発見と、歯垢や歯石が溜まらないようにするためには、 少なくとも年に1回は歯科医院を受診しましょう。 私は、今年から年に1回は友人の歯科医院を受診することに決め、先日チェックを受けてきました。
第28号より