これは、8月28日の東奥日報朝刊1面の見出しです。平成20年から24年の5年間のがん死亡率が全国最悪だというのです。特に、私が専門とする消化器がんが!これまでも市町村別のデータで青森県は死亡率が高いと言われ、自分から「短命県」と称していますので、驚くようなデータではありません。ちなみに、弘前市では、毎年、胃癌と大腸癌でそれぞれ90人程度の人が亡くなっています。

津軽地域は特に大腸癌の死亡率が高いとのことでした。これも前から言われていたことです。それに対して弘前市は特別な対策を取ってきたでしょうか?現実は、ほぼ全国に横並びの政策だけです。特別な対策は取られていません。

大腸癌の死亡率が高い原因が、「地域住民の意識や生活習慣によるものか、医療の質や体制に起因するものなのか、さらに調べる必要がある」、と新聞には書かれています。また、「精密検査の未受診、受診の遅れ、進行してからがんが見つかるケースが多い、喫煙率が高い」、などこれもいままでと同じようなコメントが寄せられています。

私たち消化器専門医から見ると、大腸癌の死亡数はもっと減らせます。沢田内科医院での経験から判断してもそれが分かります。現実に、進行がんで受診する患者さんが少なくありません。しかし、毎年、大腸がん検診を受けている人の中からは進行がんはほとんど見つかりません。私のところで進行がんと診断するのは、ほとんど初めて受診する人、これまで大腸がん検診をちゃっんと受けて来なかった人たちです。

沢田内科医院では、毎年、約1,200人が大腸がん検診を受けています。約120人が精密検査の対象となり、最終的に約10人が大腸癌と診断されます。しかも、ほとんどが早期癌です。これが毎年なのです。これらの人たちは、内視鏡治療や手術を受けますが、再発して亡くなる人はほとんどいません。便潜血反応による大腸がん検診を毎年受けて、大腸内視鏡検査で精密検査をすることで大腸癌での死亡はずっと少なくなるのです。

厚生労働省は平成23年から平成27年までの5年間、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳の節目の人たちに大腸がん検診の無料クーポンを配りました。集計してみると、この年代はその前後に比べて受診率が3倍から4倍にもなりました。無料クーポンで受診する人が明らかに増えたのです。無料クーポンを意識付けのために配るという目的が終わったことで、平成28年度から国の補助はなくなりました。

同時に、弘前市でも平成27年度で無料クーポンがなくなりました。大腸癌死亡率が全国最悪の弘前市です。少しでも大腸癌死亡数が少なくなる有効な方法を続けて欲しいものです。無料クーポンを配ると大腸がん検診を受ける人が明らかに増えます。一つの方法で死亡率が下がることはありません。医療従事者もがんばりますし、行政も有効な手を打って欲しいものです。いろいろな方法を積み重ねて、結果として全体の死亡率が下がることを期待したいものです。