がんの原因はよく分かっていないと言われていますが、はっきりしていることもあります。 EBウイルスは悪性リンパ腫や咽頭癌の原因ですし、肝臓癌はB型とC型肝炎ウイルスで起こります。 子宮頸癌はヒトパピローマウイルスが原因ですので、現在はワクチンで予防しようと対策がなされています。 びっくりするかも知れませんが、日本では、がんの27%がウイルスなど感染症が原因だと言われています。
ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍では医療保険を適用して治療することができました。 これに加え、この2月から、慢性胃炎でもピロリ菌を治療することができるようになりました。 これは、慢性胃炎を治療することではなく、ピロリ菌を治療することで胃癌の発症を予防しようとすることが本当の目的です。
日本で一番多いがんは胃癌です。年間12万人が発症し、5万人が亡くなっていると言われています。 そして、胃癌患者の約9割はピロリ菌が原因であると考えられています。このため、日本消化器病学会などが保険適用の拡大を求めていました。 今回の保険適用により、慢性胃炎の人のピロリ菌を治療することで将来は胃癌が激減することが期待されています。 ただ、再確認しておきたいことは、ピロリ菌を除菌したら胃癌にならないという訳ではありませんので、引き続き胃がん検診が重要であるということです。
新しい検査や治療法が保険適用される時には、何らかの縛りがつくことがあります。 今回も、慢性胃炎のピロリ菌を治療するためには、胃内視鏡検査が義務付けられています。ちょっとハードルが高いのです。 きっと近い将来は、胃内視鏡検査をしなくても治療ができるようになるだろうと思っています。
まずは、胃内視鏡検査を行って、ピロリ菌感染の治療を行います。この結果、ピロリ菌感染者が少なくなります。 そして、家族内感染が少なくなり、次の世代の子どもたちへの感染が少なくなります。 ただ、ピロリ菌を除菌した結果、胃癌が少なくなったと実感できるのは、20年後、30年後です。
通常の医療と並行して、将来の胃癌対策としてもう一つの計画を立てました。 西目屋村で20歳代から40歳代の人のピロリ菌感染を検査し、感染していれば除菌しようというものです。 関村長を初め、村議会の皆さんの理解が得られ、平成25年度予算で実施できる目途が立ちました。 胃がん検診は毎年受ける必要がありますが、ピロリ菌の検査は1回だけです。 できるだけ全員の検査をして、西目屋村からピロリ菌を撲滅し、将来、胃癌患者がほとんど出ない地域になってもらいたいと思っています。 もちろん、その成果を見ることなく私はこの世からいなくなっていることですが。
第75号より