前の婦長が退職してから、しばらくの間、婦長職が空席でした。この4月から、井上真利子さんが婦長になりました。これまでは集団指導体制のような感じでしたが、やはり、指揮命令系統がはっきりしないと、いろいろ情報伝達に支障を来たすことがありました。また、医療事故などを契機にして、院内感染対策、医療安全対策など、事務的な仕事がたくさん増えてきましたので、これらに対応するためでもあります。

井上さんは、私が弘前市立病院に勤務していた頃に内科外来で働いていました。平成7年、私の開業と同時に移ってきました。その頃は、黄色い声をしていましたが、さすがに最近は黄色味が薄れてきています。年齢を知りたい方もいるかと思いますが、今の世の中では個人情報として扱われるかも知れませんので、明らかにはできません。声に黄色味がなくなってきたということ、今回、看護師国家試験に挑戦した3人の中では最年長であることで、年齢を想像してみて下さい。

沢田内科医院の医療レベルを維持して行くことはもちろんですが、井上さんが婦長になったのを機会に、患者さんが快適に医療を受けられるような雰囲気を作っていくことにも重点を置きたいと思っています。医療もサービスと考えて、ホテルに滞在したり飛行機に乗った時のような扱いをするのが理想だと講習会を開いている病院もあるようです。しかし、私はそのようには思っていません。

初めて会った人に対しては、敬語を使った丁寧な言葉使いが可能でしょうが、沢田内科医院のように、開業して13年が過ぎ、ずっと通院してくれている患者さんが多数の医院ではどうでしょうか。最近流行の経鼻内視鏡検査は、患者さんと話しながら検査をすることができます。鼻を通して内視鏡を入れますので、患者さんと話をすることができます。10年も前から毎年検査を受けている患者さんに対して、「三上様、お鼻に痛みはございませんでしょうか?」などと言葉をかけたり、腹が痛くて顔が真っ青な人に敬語を使って状態を把握するのは現実的ではありません。

それに、沢田内科医院には日本の標準的な敬語を普通に使える人もいません。沢田内科医院の標準語は津軽弁ですし、津軽弁を標準語として、あずましい医院を作って行きたいと思っています。形式的なことでサービスが行き届いているように見せかけるよりも、実のある対応をして行きたいと思っています。津軽弁が流暢な井上婦長になって、この点でも変わっていくと思います。

新聞で公立病院の人事異動を見ると、看護師長という職名が使われています。法律は「保健師助産師看護師法」であり、看護婦という職業はなくなり看護師が正しい呼び方です。しかし、温かみが感じられる婦長という言葉を捨て去るのは惜しい気がします。入院患者さんも「看護婦さ~ん」と呼ぶ人がほとんどです。今後、どのように変わるか分かりませんが、沢田内科医院では看護師のことは看護婦、そのトップを引き続き婦長と呼ぶことにしました。