私は弘前市の教育委員として学校訪問に出掛けます。その際に、ある小学校の教室で「みはじの図」を目にしました。円をT字の枠で3分割し、上半分に「み」(道のり)、左下に「は」(速さ)、右下に「じ」(時間)を配置したものです。「速さ=道のり÷時間」、「道のり=速さ×時間」といった公式を覚えさせるのに便利な図です。

私が小学校の頃はこの「みはじ」で教わった記憶はありません。私は弘前市医師会看護専門学校で看護学生に講義をしています。医療現場では、薬の量や消毒液などで濃度の知識を必要とします。その時に、単位を理解してもらうために車の運転をしている場面を想定して、距離、速さ、時間の関係を説明することがあります。この時に、「みはじ」と書いている学生を目にしました。この学生は、数値を出す方法は知っていても、内容は理解していませんでした。

学校での算数は式を立てて答えを出せればいい。そのためには、「みはじの図」を使って、内容の理解はともかくとして正解を出せるようにするのでしょう。つまり、公式を暗記させて数を当てはめ、計算して正解を出せる力が身につけばいいということなのでしょう。

教室では、算数の時間に先生が、「式は?」と子どもたちに問いかけます。式に数字を当てはめて計算させ、「答えは?」と言って数値を書いて正解となります。もちろん、式を立てる前になぜそうするのかは説明しているのでしょうが、実際に繰り返し行われていることは、公式に当てはめて数値を出すことです。

算数は新たな課題に出会った時に、これまで習ったことを基に筋道を立てて解決する力を育てる教科だと思います。世の中で生きて行く力を身につけることと似ていると思います。反射的に答えを出すことが要求されている教室の中で、このような力がつくのだろうかと思いながら見ていました。