ある日、外来診療が始まる前に、臨床検査技師の宇野洋子さんがいきなり目の前に書類を差し出しました。「合格」通知でした。 何の?と一瞬思いましたが、糖尿病療養指導士試験に合格したという通知書でした。びっくりです。
糖尿病は、血糖が高くて糖が尿に出る単純な病気ではありません。基本的には血糖が高い状態が続くと目や腎臓が悪くなり、 結果として失明したり腎臓の透析が必要になることがあります。 神経障害は足のしびれだけでなく、胃腸の働きを悪くするので、全身の病気を引き起こします。 さらには心筋梗塞や脳梗塞になると命にかかわるという恐ろしい病気です。
糖尿病の治療は、薬を使うだけでなく食事や運動など日常生活の指導や足に傷がないかなど細かい観察も必要になります。 このため医師だけで糖尿病の診療を行うには無理があります。そこで、医療資格を持つ職種の人たちが共同で診療にあたる必要が出てきました。 その中で、糖尿病診療のレベルアップのために、「糖尿病療養指導士」という制度が設けられました。 今回、宇野さんが合格したのは、青森県の地域限定で認定される「青森糖尿病療養指導士」です。
糖尿病療養指導士になるためには、かなりの勉強が必要です。 糖尿病に関する基本的な知識を身につけ、定められた講習会を受講し、認定試験に合格することが必要です。 患者さんを直接指導する実績は必要とされませんので、私は宇野さんがこのために勉強していたことを全く知りませんでした。 講習会に参加して勉強していたことも知りませんでした。後で聞いてみると、昼休みなどに本を広げて一人で勉強していたようです。
2ヶ月ほど前に調べてみたところ、沢田内科医院には約330人が糖尿病で通院していました。 血糖とグリコヘモグロビン(HbA1C)は受診した時に分かるようにしていますし、眼底カメラも用意しています。 昨年は、動脈硬化の程度を知る血液脈波検査装置を購入しました。糖尿病の人たちの合併症をできるだけ早く診断して対処するためです。
小堀未希さんも糖尿病の勉強を開始しました。想定外だった宇野さんが糖尿病療養指導士の資格を得たことで、 糖尿病の診療体制に厚みが出てきました。沢田内科医院の診療レベルはますますアップしていきます。
第67号より