小堀未希さんが看護学士を授与されました。何と言っても、働きながら看護学士になったことはすごいことです。大学に通学しないで働きながら看護学士になった話は、未確認情報ですが弘前市内では聞いたことがありません。少なくとも4,000人以上いる弘前市医師会看護専門学校卒業生の中では第1号です。
小堀さんは准看護師として日中は沢田内科医院で普通に働き、夜間定時制である弘前市医師会看護専門学校を卒業しました。3年半前のことです。他の同期の人たちは大きな病院に就職したのですが、小堀さんは一人だけ開業医である私の医院で引き続き働くことを選びました。私は、小堀さんの将来の可能性を広げておくために、専修学校になった利点を生かす意味でも放送大学に編入し、看護学士を目指すことを提案しました。そうなれば、看護師としてだけでなく、看護専門学校の教員として働くこともできるよとも。
看護学士を申請するためには論文を提出する必要がありますので、看護専門学校を卒業した時点でテーマを糖尿病としました。糖尿病を理解することは全身の病気を理解することに直結しますので、看護師としてこの分野に力をいれて勉強することを勧めたのです。
平成23年4月に放送大学に入学した時点で看護専門学校の62単位が大学の単位として認められました。放送大学で残り62単位を取得し、2年間在学すると大学卒業の要件を満たします。3年の予定だったのですが、平成25年9月で放送大学で65単位を修得したため、放送大学を卒業しました。放送大学では教養学士が授与されました。
平行して進めていた糖尿病療養指導の仕事内容をまとめ、平成26年4月に大学評価・学位授与機構に論文を提出しました。400字詰め原稿用紙で数えると約35枚の力作でした。6月8日に小論文試験があり、8月22日付で学士(看護学)が授与されました。合格は確信していたのですが、学位記が送られてきた時は大変な喜びでした。私にとっても最高に嬉しい出来事でした。
これは看護学士の副産物で、前回のニュースレターで紹介しましたが、平成26年5月、資格審査と認定試験に合格して日本糖尿病療養指導士にも認定されました。この資格を持つ看護師も弘前市内には数えるほどしかいません。
今回の看護学士が授与されたことの特徴がいくつかあります。弘前市医師会看護専門学校が専修学校になったことで看護師という国家資格を得るだけでなく、大学に編入して放送大学を卒業したこと、さらに、専門分野の単位をそろえ大学評価・学位授与機構から看護学士の学位を授与されたこと、開業医で働きながら経済的に自立して看護学士を取得することができたこと、このような特徴があります。これらのことが現在働いている看護師の励みになり、弘前市医師会看護専門学校へ進学しようとする高校生の動機付けになるのではないか思っています。
小堀さんは、来年度から母校で講義を受け持ち、教壇に立つことになっています。さらに臨床経験を積み、4年後を目処に弘前市医師会看護専門学校の教員になる予定です。小堀さんの小学校の卒業アルバムには、将来なりたいのは「先生」と書かれていました。そして、「やるときゃやるのよ、まかせておいて。」と担任の先生のコメントがついてました。
最後にエピソードをひとつ。皆さん、ペンダコが破れるほど勉強したことがありますか? 看護師は看護記録を書いたり、結構、書くことが多い職業だと思います。看護学士の認定試験は、提出した論文に対しての筆記試験です。これは、論文に関係する内容であることが分かっていますので、対策問題を10個ほど作り1題45分を目安に約1,000文字で説明する練習を何回も何回も繰り返しました。その途中でこのペンダコが破れたのです。
第83号より