検査をした後に異常がないと言われ、それに納得しない方が少なくありません。 でも、これは不思議でもなんでもないのです。お腹が痛い場合を考えてみましょう。 お腹が痛くて内視鏡検査をした結果、胃癌や潰瘍のように明らかに目で見える異常がある病気がある一方で、 目で見える異常がない場合が少なくありません。 これは胃腸の働きに異常があるために症状が出るのです。 同じ症状であっても、通常の検査で異常が見える病気と、検査では異常は見えないが働きが悪いため、 あるいは強すぎるために症状が出る病気があるのです。 開業医院では、お腹が痛いが検査では異常がない患者さんの方がむしろ多いのです。
病気は検査で原因がみんな分かるわけではありません。 腹痛などの症状があっても、必ずしも検査で異常があるわけでもありません。 将来はいろんな検査方法が開発されて、現在の医学では分からないことが説明できるようになるかもしれません。 しかし、現実には、検査では異常がなくても患者さんが苦しいことがたくさんあります。 検査で異常がないから病気ではない、気のせいだ、治療する必要がない、このように判断することは間違っていると思います。 この苦しみを取り去ることが私たちの役目だと思っています。目に見える異常がない病気はたくさんあります。
医学的には、器質的疾患と機能的疾患と大きく分けています。胃癌などのように目に見える病気が器質的疾患です。 これに対して、腸の動きに異常があるためにお腹が痛くなる過敏性腸症候群は検査では異常は見つけられません。 しかし、働きに異常があるためにお腹が痛くなるのです。このような病気を機能的疾患と言います。 機能的疾患を「気のせいだ」と片付けてしまわないで、働きを整える薬を使うと症状が軽くなります。 話を聞いて不安を取り除くだけで症状がなくなる場合もたくさんあります。
検査は目に見える病気を診断するために行うことは当然ですが、 目に見える異常がないことを確かめるために行うことが少なくありません。 検査をして目に見える異常がないから病気がないわけではないのです。
第16号より