昨年10月から弘前市とその周辺では麻疹(はしか)の流行がありました。 現在でも終息したわけではなく、例年の春の流行時期につながってしまいそうな状態が続いています。 麻疹への対策は、ワクチンが最大の武器で、これしかないと言っても間違いではありません。 しかし、今回の弘前の流行は、ワクチンを接種している子どもが76%だったということです。
麻疹の流行があれば、まずワクチン未接種の子どもたちにワクチンを接種することが第一です。 ところが、今回の流行はワクチンを接種した子どもたちが罹りましたので、この手が使えないという状態でした。 まさにお手上げです。麻疹の最初の症状は通常の風邪の症状と区別ができません。 発疹が出て初めて麻疹と診断できます。ですから、初期の段階で麻疹対策を行うことが非常に難しくなってしまいました。
今の麻疹の流行は、子どもに麻疹ワクチンを接種したために起こったという一見、矛盾した状況です。 麻疹が適度に流行していれば、子どもたちは麻疹に接しますので、自然に麻疹に対する抗体を体の中に持つことができます。 しかし、ワクチンを接種したために麻疹の流行が少なくなり、結果として麻疹の抗体が低くなってきました。 また、ワクチンを接種しても感染を防ぐ程度の抗体が作られていなかったことも原因の一つのようです。
このような状況では、ワクチンをもう一度接種すれば子どもたちを麻疹から守ってやることができます。 西目屋村は小さな村ですので、少なくともそこの子どもたちは 麻疹から守ってやることができるのではないかと計画を立てました。 そして、西目屋村に予算を準備してもらい、実施しました。
最初は、12月にでもワクチンを接種しようとしたのですが、今年は例年に比べてインフルエンザの流行が早く来てしまい、 麻疹ワクチンを接種する時期を逸してしまいました。 そこでインフルエンザの流行が一段落した2月にワクチン接種を行いました。 小学校1年生は、入学前にMRワクチン(麻疹と風疹ワクチン)を接種していますので、 小学校2年生から中学3年生まで、101人が対象でしたが、結果的に90人の子どもたちに接種しました。 流行を阻止するためには、95%以上の接種が必要と言われていますので、 もっとたくさんの子どもたちに接種してもらえればよかったと思っています。
ワクチンには二つの目的があります。つまり、自分が病気にならないという目的と、 自分が生活する社会で病気を流行させないという目的です。 学校で麻疹が発生すると、その子が困るだけでなく、他の子どもが感染したり、 学校行事を中止したりと大変大きな影響があります。麻疹に限らず、ワクチンは積極的に受けましょう。
第44号より