8月31日(木)に弘前市医師会の仕事で東京へ出張しました。 決まったのが10日余り前ですし、休診にすることもできません。 内視鏡検査などの予約はすべてストップし、外来診療だけを木村あさの先生にお願いして出かけました。 木村先生は、私が在籍した弘前大学第1内科から付属病院輸血部に移り、今年3月に退職した血液の専門家です。
平成7年に開業以来、医院を留守にしたことは初めてでした。 体調が悪くても、休んだことは1日もありませんでした。 患者さんから、「先生は風邪をひかないんですか?」とよく言われます。 今のウイルスは利口かどうかの区別なく感染するようですので、私も風邪をひきます。 1年のうち何日かは、「今日は、私よりも患者さんの方が元気だな・・・・。」と思いながら診療しています。 全く食べられず、点滴をして水分を補給しながら診療したこともあります。
今年の4月から弘前市医師会の理事になりました。 50を過ぎると自分のことだけを考えているわけにもいかないなと思い、 最近は、若い研修医の育成への協力など、社会的な活動を少しずつ広げてきました。 しかし、理事へのお話があった時は、「困った」と思いました。 先輩の先生方の話では、医師会理事は自分の医院を犠牲にしてまで仕事をしなければならないと聞いていたからです。
最初は、患者さんに迷惑をかけてまで医師会活動を優先しなければならないのか、 医師は患者さんを第一に考えて仕事をするのが使命ではないのか、などと疑問に思いました。 しかし、自分の医院を受診している患者さんの迷惑になっても、弘前市全体の患者さんのことを考えると、 これも仕方がないのか、と自分を納得させて出かけています。 通常の医師会の理事会や委員会は、診療が終わった夜に行われますので、 それほど診療には影響がありませんが、入院患者さんに十分な時間が割けない時は、 後ろ髪を引かれるような思いで出かけることがあります。
私の大学の同期で、埼玉県で開業している前田賢司先生は、 毎年、1週間近く医院を休診にしてアメリカ内科学会総会に出かけています。 外国の学会に行く時は、観光が半分と相場は決まっていますが、彼は違うのです。 毎日、学会場にでかけて勉強してくるのです。 こうして最新の知識を仕入れて日常の診療に生かすことの方が、1週間休診して患者さんの不便になることよりも、 結局は患者さんのためになると考えているのです。
開業して11年になりますが、私は新しい知識の大部分をインターネットを介して仕入れてきました。 その他に役に立ったのは、休日に開催される学会や講演会でした。 大きな学会はウィークディに開かれますので開業医は出席が困難です。 それに、以前の学会は研究集会が主体で、日常診療に役立つ内容は非常に少ないものでした。 しかし、最近の学会のプログラムを見ると、臨床に役立つ魅力的な教育講演がたくさん開かれています。
私の医師としての力を落とさないため、結果として皆さんによりよい医療を提供するためには、 ただ休まずに診療を続ける今の状況では不十分だと考えるようになりました。 また、弘前市医師会理事としても、自分の領域だけを守っていては、 弘前市の医療状況の向上にはならないとも思っています。 医院を留守にして皆さまにご迷惑をおかけすることが多くなると思いますが、ご協力をお願いいたします。
第35号より