7月の参議院選挙は民主党の大勝利に終わりました。参議院で民主党が第1党になりましたが、 騒いだ割には得られたものが少なかった選挙だったと私は思います。 私は医療問題が争点の一つになると期待していたのですが、突然、年金問題が勃発し、 しかも過去の年金問題があぶり出されただけで、将来のことが問題にされなかったからです。
青森県では「医師を集約する」と称して、医師不足のために病院の小児科や産科が閉鎖されただけでなく、 平川市では市立病院そのものが閉鎖されました。有権者にとって医師不足が身に迫った現実問題となっていましたので、 各政党が現在の医療問題に対してどのように対処するのか、どのような将来構想を持っているのかを、 マニフェストで示して欲しいと思っていました。ところが、予期しなかった年金問題で、医療問題は全く忘れ去られてしまいました。
年金問題を議論することも重要なことです。医療と年金は私たちが安心して暮らしていくために基本的なことですから。 ところが、今回の年金問題は、年金をどうするかという本質的な問題ではなく、 年金番号が統合されていなかったなどという技術的な問題に終始しました。 結局、過去の問題が掘り起こされただけで、年金の将来のことに関しては方針がまったく示されませんでした。 この技術的な問題を争点にして投票が行われたのが今回の参議院選挙でした。 私も有権者の一人として、今回は期日前投票をしましたが、投票した人は年金問題では選びませんでした。 せっかく医療問題が話し合われると期待していたのに、本当に残念なことです。
アメリカはチャンスは等しく与えるが、結果はそれぞれが受け取るという、機会平等社会です。 当然のこととして、アメリカでは、医療に使われる政府のお金は少なく、個人の責任で医療が行われています。 お金がある人はそれなりの医療を受けられるが、お金がない人は低レベルの医療しか受けられません。 いわゆる小さな政府のやり方です。これに対して、北欧は政府が間に入って所得を再配分する結果平等社会です。 税金は高いが、医療に対しては個人の負担が少なく比較的平等な医療が受けられます。つまり、大きな政府のやり方です。 現在の日本はこの中間のようです。
アメリカの政府予算の割合を見ると、軍事予算は当然多いのですが、社会保障費の割合も非常に大きいです。 単純に比較できませんが日本よりも大きいのではないでしょうか。 それでも、健康保険に加入できずにいる人たちが3千万人とも4千万人とも言われています。 これらの人たちは十分な医療を受けられるという状況にはないようです。 NHKテレビ『救急救命室ER』のドラマでは、医療現場はまるで街中のように混み合っています。 これは、お金がない人たちが、医療を拒否されることがない救急医療に飛び込んでいるためと思います。 日本の医師は、応召義務があり、診療を求められれば正当な理由がない限り拒否することはできません。 しかし、アメリカでは保険に入っていないために医療費の支払能力がなければ、診療を拒否できるのだそうです。 当然、保険に加入していない貧しい人たちは、十分な医療を受けられないことになります。
小泉政権が目指したのは、アメリカ型の小さな政府のやり方です。民間でできることは民間でというやり方です。 私は医療に関しては、結果平等社会がいいと思っています。 何でも民間にというやり方は、医療を市場原理に任せるとういアメリカ型の医療になるということです。 日本の政府はこんな破綻した医療制度をなぜ目指すのでしょうか。国立大学も民営化して、いろいろな問題が出てきています。 市場原理主義は医療と教育にはなじみません。
税金負担は少ないが、その代わり個人負担が多いアメリカと、税負担は多いが個人の負担が少ない北欧を比べてみると、 結局は所得に対する負担率が約40%とあまり差がないというデータがあります。 お金があればいい医療が受けられるアメリカ型と、負担は大きいが平等な医療を受けられる北欧型、 日本の医療はどちらの方向に向かった方がいいのか考えておく必要があります。
第41号より