ふだんから周りの人に「いびきがひどい」とか「寝ているときに呼吸が止まってたよ」とか言われたことはありませんか? そのような症状がある方は「睡眠時無呼吸症候群」が隠れているかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は寝ているときに息が止まってそのまま亡くなってしまうという病気ではありません。寝ている間、まるで水に潜って息を止めているときと同じくらいの酸素しか取り込むことができず、様々な臓器にダメージが蓄積して障害を引き起こしていく病気です。「寝たのに寝た気がしない」「寝て起きたのにものすごい疲れが残っている」「昼間もいつも眠い」など、重症の方ではそういう症状があっても本人も家族も慣れてしまっているのが現状です。
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす合併症はたくさんあり、中でも糖尿病が1.5倍、高血圧が2倍、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血)が4倍、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)が3倍にリスクが上がると言われています。そして病気ではありませんが交通事故は一般のドライバーと比較して7倍発生率が上がるといわれています。危険性が高いのは寝る前にお酒を飲む人、20代前半の頃にくらべて極端に体重が増えた人、顎がもともと小さい人、首が短い人が挙げられます。
このたび当院でも睡眠時無呼吸の検査をすることができるようになりました。これまで自宅でできる検査としては胸に電極を貼って不整脈を調べるホルター心電図検査、上腕に巻いた血圧計で1日の血圧変化を30分おきに調べる24時間血圧計の2つがありました。睡眠時無呼吸の検査も入院ではなく、自宅でできる検査になります。準備は簡単です。寝る前に鼻にチューブを装着して、左手指に酸素を調べる機械を挟んで一晩寝るだけです。翌朝機械を病院に返却して解析に回して後日結果説明となります。
治療としてはマウスピースや夜間寝るときに鼻に専用の空気を送り込むマスクをつけて寝るなどの方法があります。夜の熟眠感がないために眠前のお酒が増えているとか、睡眠薬が増えている方の中にも陰に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることも稀ではありません。
実は私自身も疲れているときなどにいびきがひどいと言われていたので、自分で検査をやってみました。寝返りの時などに鼻と指に若干違和感があって眠りが浅かったような気がしたので、完全に普段の記録かというとそうではないような気もしますが、しっかりいびきは記録されていました。(幸い治療対象となるほどひどくはありませんでしたが・・)家族にいびきを指摘されて別室で眠るなど肩身の狭い思いをしている方も一度検査をしてみてはいかがでしょうか。
第119号より