『病は気から』といいますが、気が緩んだ時に風邪にかかりやすいのは、皆さん、経験済みだと思います。 血圧で通院している患者さんが、鼻水が出るから風邪薬が欲しいと言う時などは、 「これ位の風邪は、気合で治しましょう!」と、薬を出さないで帰ってもらうことがよくあります。 20040515C1.gif そして、翌日、「先生、気合が足りませんでした」と言って、苦しそうに受診します。 「心に隙間があると、ウイルスが入り込むんですよ」と、またまた精神論を持ち出すのですが、 当の患者さんはそれどころではないようです。
「先生は、風邪をひかないんですか?」と、よく聞かれます。 私も年に何日かは具合が悪い時があります。 夕方に診療が終わると、「今日は、8割の患者さんは私よりも具合が良かったなぁ・・・」と思うこともあります。 そんな時は、職員には、「ちょっと気合が足りなくて、心の隙間からウイルスが・・・・」と言い訳をしています。
さて、本題に入ります。人類は獲物を追って暮らす狩猟生活を長く続けてきました (断っておきますが、私が経験したのではなく、歴史的に見ればの話です)。 その結果、獲物を捕れない時に備えて、余分なエネルギーを脂肪として蓄えておく能力が備わってきたのだと思います。 このような時代には肥満は生きるために必要だったわけです。 しかし、脂肪は余ったエネルギーを蓄えておくだけでなく、いろいろなホルモンを出すことが分かり、 一つの内分泌器官だと考えられるようになって来ました。
太っていると言っても2種類に分けられます。皮下脂肪による肥満と内臓脂肪による肥満です。 女の人は皮下脂肪型が多く、これはただのデブです。これに対して男の人はお腹に脂肪がたまり易く、 足や腕には皮下脂肪が少ないのが普通です。 少しお腹が出て恰幅がよくなると偉く見えますので、なかなか引っ込めることをしません。 しかし、高血圧、動脈硬化、糖尿病に関係するホルモンを出すのはこの内臓脂肪なのです。 男の寿命が女よりも短いのは、女にこき使われるためだけでなく、このあたりに原因があるようです。
口は災いの元といいますが、口は病の元でもあります。食生活や肥満の改善によって、予防可能な病気がたくさんあります。 脳卒中や心臓病などの循環器系の病気は、高脂血症、高血圧症、糖尿病、肥満などのために動脈硬化になるのが原因です。 豊かになった今の世の中では、いつでも食物を得ることができますので、エネルギーを蓄えておく必要はなくなりました。 『病は口から』です。食べ過ぎを避けて、肥満防止に努めることが大切です。
私が生まれる前、つまり、50年も前にはビタミンや栄養が不足して病気になったことは確かなようです。 しかし、現在では足りないのはカルシウムだけで、余って病気になるのです。 世界レベルで見ても、何年か前に、肥満人口が飢餓人口を上回ったのだそうです。 『体にいいから』と食べながら健康を維持しようとせずに、『その一口が、ブタになる』を思い出して、 病気になるのを防ぎましょう!!『太っていいのは、相撲とブタ』です!!
第21号より