健康診断でコレステロールが高いと言われ、心配になって受診する人がたくさんいます。 テレビを見ると、すぐにでも『あだってしまう』のではないか、 『血液がドロドロになっているのでは』とさらに心配になります。
集団検診などでは、総コレステロールや中性脂肪の値が基準値を超えていると、 『高脂血症疑い』として、医療機関を受診するように勧められます。 総コレステロールも中性脂肪も測る時で結構変動しますので、医療機関では再検査します。 この結果、総コレステロールの値が高いことが確かめられると、治療方針が決められます。 患者さん同士で話をしていて、同じ値なのに何で治療が違うのか不思議に思っている人が少なからずいますが、 同じ値であれば、みんな薬を飲んで治療するわけではありません。
『総コレステロール』の名前が示すように、総コレステロールは、 主に、①善玉といわれるHDLコレステロール、②悪玉のLDLコレステロール、③中性脂肪の一部、から成り立っています。 総コレステロールの値が同じでもこの三つの内容によって、治療が違ってくるのです。 代表的なのが、HDLコレステロールが高いために総コレステロールが高い場合です。 必ずしも全員に当てはまるわけではありませんが、中性脂肪とLDLコレステロールが正常で、 HDLコレステロールが高いために総コレステロールが高くなり『高脂血症』と診断された場合には、治療は必要ありません。
また、高血圧がある、糖尿病がある、タバコを吸う、家族に心筋梗塞の患者さんがいる、 などの場合はコレステロール値がこれよりも低くても治療を早めにします。 コレステロールの治療は、単にコレステロールの値を低くするのが目的ではありませんので、 患者さんがどんな病気になりやすいか、どんな危険因子を持っているのかを確かめて治療方法を選んで行きます。 また、このような場合には、低くする目標となるコレステロールの値も違ってきます。
つまり、数値が同じでも、その人のコレステロールの内容、家族歴、 持っている病気などの状況によって治療が違ってくるのです。 数値だけで友達同士で勝手に解釈して心配したり、テレビの話に惑わされないで、 検診の結果が分かった時には持ってきて下さい。一緒にその結果を解釈しましょう。
ところで、外来で、『コレステロールが高いと、何で悪いのか知ってますか?』、 『コレステロールが高いと、どうして治療しなければならないのか知ってますか?』と患者さんに聞きますと、 意外と答えられない人が多いです。コレステロールが高いとどうして良くないのだと思いますか?
第22号より