政府は、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の解禁について、 規制改革・民間開放推進会議が求めていた原則解禁は見送りましたが、 (1)保険診療と併用できる医療・医薬品を拡大する、 (2)保険適用までの審査手続きを迅速化する、 (3)一定要件以上の技術を持つ医療機関は、届け出により併用診療を認める、 など、現行制度の大幅な見直しで対応することを決めました。
現在の健康保険制度では、 (1)健康保険を使って費用をまかなう「保険診療」、 (2)全額自己負担の「自由診療」、 このどちらか一方を選択することになっています。 ほとんどの患者さんは保険証を持ってきて受診しますので、「保険診療」を選択していることになります。 何らかの理由で健康保険に加入していなかった場合、保険証を持って来なかった場合は「自由診療」になります。
特別な場合として、健康保険を使って3割負担の「保険診療」を行っている時に、 保険適用外の治療法や医薬品を使う場合があります。 この場合は、診療全体が「自由診療」扱いになります。 つまり、保険診療分を含めて全額自己負担となります。
ちょっと複雑で変だと思うかもしれませんが、適切な医療を行う上では大切なことのようです。 つまり、効果や安全性が疑問視されている医療行為を行えないようにしたり、 一部のいわゆる悪徳医師により患者さんの負担が不当に大きくならないようにするため、 などが理由として挙げられています。 ちなみに、「自由診療」としないで、「保険診療」を行いながら保険が使えない診療をした場合、 病院側がその分を負担します。患者さんに請求してはいけないことになっています。 患者さんに請求した場合は、全額が「自由診療」となってしまいます。
これに対して、「混合診療」とは、健康保険が適用になる診療と、保険適用外の診療の両方を ミックスして行うことをいい、3割など一部負担の「保険診療」と、 全額自己負担の「自由診療」の組合せで診療を受けられることを指します。 「混合診療」の解禁は、国内で未承認の治療法や医薬品を使うことができる上、 保険診療部分は3割負担で済むため、個人にとってはメリットがあることとされ、 政府もその点を強調して解禁を進めようとしています。
一見、合理的にみえますが、「混合診療」には、いくつかの重大な問題があります。 例えば、次のようなことです。
もし混合診療が始まると、自己負担分を賄うために民間の医療保険会社の医療保険に加入することを 余儀なくされると言われています。 混合診療をビジネスチャンスと捉えている保険会社などのグループが混合診療解禁を 強く主張しているのも一つの理由です。 このようになると、医師が関与しない保険会社による審査や支払いが行われることにもなります。 現実にアメリカでは、医師が治療を行ったのに保険会社から医療費を支払ってもらえないケースも発生しています。
混合診療の背景には、これらの他にもたくさんの問題が潜んでいます。 メリットとデメリット、どちらもあります。お金がある人だけが良い医療を受けてもいい、 という考え方を認めれば、あらゆる所得階層の人から保険料を集めてリスクを分散させるという、 現在の国民皆保険制度の崩壊につながります。私は混合診療には反対です。皆さんはどう思われますか?
第25号より