平成17年4月から午後の診療をそれまでの2時から3時開始に変更しました。 午後の診療時間を3時間に短縮し、昼の時間の一部を病歴要約の作成に当てようとしたものです。 午前の受付は12時半までですが、特に冬の間は2時からの診療開始では昼休みがほとんど取れないことがありました。 3時から午後の診療を開始することで、昼休みが全くなくなることはなくなりました。 しかし、午前の部の診療が1時半から2時に終わることが多くなりましたので、 実際には病歴要約を作成する時間として使うことはできません。 昼休みなしでカルテの見直しをしていては、とても体が持ちません。
本来、とりあえず行うのが救急医療の現場でしたが、最近は、救急の現場でも一般市民の要求は専門医療です。 内科医が当直する夜中に小児科専門医の診療を希望し、 外科医がとりあえず対処できる外傷でも整形外科医の診療を希望するという現実があります。 それに対応するために相対的に医師不足となり、その結果、医師の過重労働が大きな問題となっています。 このような、最近の世の中の医師に対する要求が高まっている状況を見て、 私の医院でも、これまでのような重症肺炎や外科手術を考慮しながらの治療などは差し控えようと考えています。
例えば、私は大腸ポリープ切除を行っています。幸いなことに外科医にお願いして出血などを処置してもらったことはありません。 しかし、内視鏡で止めることができる程度の出血が続いたことは何回もあります。 手術件数と技術は比例すると言われています。大きな病院と比べて、私が行っているポリープ切除数は非常に少ないものです。 年々、技術が進歩し、機器が改良されている現在、離れ島などであれば私の技術でも必要でしょうが、 専門医がそろっている弘前市内であえて危険と隣り合わせの医療を続けていく必然性がありません。
どんな病気にも対処できるということは、実は、専門的な十分な医療を患者さんに提供していないということです。 開業して12年も経つと、提供できる医療の内容が変わってきました。 大きな病院で行っているのと同じ診療内容では、私のところでは一段低いレベルになってしまったのです。 逆に、外来診療では大きな病院ではできない医療を提供できる自負があります。 ですから、今までの医療内容を絞り、家庭医としての役割を大きくするように方向転換をします。
来年4月からは、基本健診も、糖尿病、高血圧症、高脂血症、肥満、というメタボリックシンドロームを標的にした健診に変わります。 糖尿病を減らすことと、脳梗塞と心筋梗塞を減らすことが最大の目的です。 がん検診を行うことと、これらの病気をしっかり管理することで通院して下さる皆さんの健康管理をしっかりして行くことが 私の開業医として役割だと思っています。
開業医が診療時間を長くして患者さんに医療の機会を提供するのは大事なことです。 しかし、長い目で見ると、私は私なりの良質な医療を提供することがもっと重要なことだと思っています。 決して、専門知識を仕入れて最先端の専門医療を提供するわけではありません。 私の医院へ通う患者さん一人ひとりをきちんと把握して診療したいのです。 このために、いろいろな試みをしてきました。先輩の医師に手伝ってもらったこともその一つです。 いろいろ考えた結果が、金曜日の午後を休診にすることです。 そして、もっと余裕を持って患者さんの診療にあたることで、家庭医としての役割を果たそうと思っています。
体力的なこともあります。医学部を卒業して30年になりました。今年で55歳です。 一般社会では、そろそろ定年を考えながら仕事をしている時期でしょう。 医院の診察室に、「忙しいのもよいけれど 心を亡くしちゃ いけないよ」と書かれた戒めを掲げています。 弘前市医師会の仕事も加わり、ここ2、3年は特に忙しくなってきました。 習慣化した仕事を長時間していては、10年後には何が残っているのだろうと考えてしまいます。 医師になって10年は大学病院、その後10年は一般病院に勤務、開業して約10年。 これからの10年をこれまでと内容を変えて働いてみようという思いもあります。
平成20年4月から金曜日の午後を休診にします。これまでは、土曜日だけでなく水曜日午後も休診でした。 患者さんの側からみると、診療機会が奪われることになります。しかし、休みにすることで、もっとレベルの高い医療を提供することができますので、ご協力をお願いいたします。
ちなみに、1ヶ月間にどれくらい時間外に受診する患者さんがいるのか調べてみました。 5月と8月は休みが多かったのでそれぞれ57人と80人、その他の月は30人程度でした。
第41号より