人、鳥、豚の3つのウイルスが融合した新型のインフルエンザウイルスがメキシコに出現し、ものすごい速さでアメリカを初め全世界に感染が拡大しています。5月8日には、カナダから帰国した高校生と引率の先生の計3人が感染していることが分かりました。日本国内でも感染が広がるのは時間の問題です。

インフルエンザの歴史から考えると、そろそろ新しい形のインフルエンザウイルスが現れると予想されていました。新しいウイルスに対しては、誰も抵抗力を持っていませんので、世界で流行すると、とてつもない多数の死者が出て、社会機能が麻痺するのではないかと言われています。そして、この新しい形のインフルエンザは、主にアジアで感染が見られる毒性が強い鳥インフルエンザから形を変えて人に感染が広がると予想されていました。

ところが、4月下旬にメキシコに近いアメリカで豚由来のインフルエンザにかかった人がいることが報告されました。そして、このウイルスは実は、メキシコですでに多くの感染者を出し、死亡者がいたことが分かったのです。豚からのウイルスと言われていますが、人、鳥、豚のウイルスが混じったもので、人に感染するだけでなく、人から人へと感染するウイルスであることが分かりました。

インフルエンザウイルスは、人だけでなく鳥や豚にも感染します。鳥や豚のインフルエンザウイルスが人に感染しても新型インフルエンザとは言いません。人が感染した鳥や豚のインフルエンザウイルスが、人から人へ移るようになった場合を新型インフルエンザと言います。今回は、豚に感染するインフルエンザウイルスが人へ感染し、人から人へ感染するようになったために新型インフルエンザと認定されたのです。

幸いなことに、今回の新型インフルエンザウイルスの毒性はそれほど強くはなく、死亡例は少ないようです。しかし、このウイルスが強い毒性を持ったウイルスに変わる可能性があり、そうなれば多数の死者を出す可能性があります。また、このウイルスとは別に、これまで予想されていたように、鳥インフルエンザウイルスが人の間で感染するようになり、強い毒性を持った新型インフルエンザが同時に発生することも考えられます。

国外からの新型インフルエンザウイルスの侵入を阻止しようと、空港や港では検疫所が一生懸命です。その甲斐があって、カナダから帰ってきた感染者の入国を阻止することができました。しかし、アメリカ国内の感染者数の増加速度はすごいものです。ソ連型とか香港型と言われているインフルエンザは、最初は新型インフルエンザでした。今の新型インフルエンザも通常のインフルエンザになるのは間違いありません。

新型インフルエンザに対して免疫がありませんから、このままでは世界中で多数の人たちがインフルエンザにかかります。新型インフルエンザウイルスに対するワクチンを作るには、6ヶ月くらいかかるようです。検疫所の職員が頑張っているのは、日本国内での流行を少しでも遅らせ時間稼ぎをするのが目的です。その間にワクチンが開発され、日本の流行が最小限に食い止められれば幸いです。しかし、アメリカ国内での感染拡大速度を見ると、とても期待できそうもありません。

インフルエンザウイルスには、ワクチンが最大の武器です。しかし、ワクチンが開発されるまでは、自分が感染しないようにし、感染を周囲に広めないようにしなければなりません。そのためには、口や鼻に手をやらないこと、手を何回も洗うこと、咳やくしゃみをする時は袖やティッシュで口や鼻を押さえること、などが大事です。マスクをすること、うがいをすることも大事です。

欧米では風邪をひいた時にマスクをしたり、うがいをする習慣はありません。マスクをしないアメリカで日本よりもインフルエンザが多く流行しているという話は聞きません。ただし、これは日常生活で一般の人たちがマスクをしないということで、医療機関でマスクをすることが感染を予防することは分かっています。インフルエンザの予防のためにはマスクをした方がいいと思います。ただし、何回もくしゃみや咳をした場合は、新しいマスクにしましょう。ポケットに入れておいて、何日も使うようなことはしないようにしましょう。