青森県はフジテレビの番組は見られません。一部の地域では北海道や岩手の放送が受信できるようですが。ということで、プロ野球日本シリーズは、札幌ドームでの試合は中継されませんでした。BSで見るかラジオということになります。先日、フジテレビで「とろろ昆布ダイエット」が放送されたそうです。例によって、女性タレントに「とろろ昆布」を食べさせて、「エッ! こんなにやせた!! 信じられない!!!」などという内容だったのでしょう。翌日から、スーパーで「とろろ昆布」が飛ぶように売れたのだそうです。幸いにして、職員に聞いてみても、「とろろ昆布ダイエット」の話は知りませんでした。
私は、「食べながらやせるなんて虫が良すぎる。公務員がわいろをもらいながら仕事を続けるようなものだ」と患者さんによく言います。ダイエットは地道に続ける方法しかありません。食品ダイエットのここ数年の歴史を振り返ってみましょう。よくもまぁ、次から次と、新しいダイエット法が出てくるものです。
まずは、昨年の話題で記憶に新しい「バナナダイエット」です。バナナの酵素が代謝を促進し、脂肪を燃焼させるというものです。朝食に食べる「朝バナナ」がブームになりました。これは弘前市内でもスーパーからバナナが消えたそうですので、大変なブームだったのでしょう。ちなみに、個人的な体験ですが、私は10年も前から朝にバナナを食べていますが、全く変わりません。
さて、平成19年には、納豆を食べるダイエットがありました。納豆にはダイエットによいホルモンが多く含まれているというものでしたが、これはデータねつ造が発覚して大問題となりました。単純にデータの捏造だけではなく、アメリカ人の研究者のコメントを日本語に翻訳した字幕では話したこととは異なる内容にして自分たちの都合のいいように変えていたようです。また、業者の方でも、番組の内容を予め知っていたために、売れることを予測して大量に仕入れていたという話もありました。納豆を2週間食べて、写真で分かるほどやせるのであれば、こんなに食べられている納豆のことですから、食べている人自身がすでに気づくと思います。その辺の判断を他人に任せてしまっている視聴者にも原因がありそうです。
次は、平成18年の「白インゲン豆」です。炭水化物の吸収を抑える成分が含まれているとして、加熱して粉末状にして食べるといいということでした。この時は、私は弘前市医師会急患診療所の当番でしたので覚えています。下痢を訴えてきた患者さんが「白インゲン豆」が原因だという話を私は理解できず、内容を患者さんに教えてもらいました。後で調べて「白インゲン豆」のことを知りました。
平成17年には、「寒天ダイエット」がはやりました。寒天に含まれる食物繊維により満腹感が得られ、さらに脂肪分が食物繊維に包み込まれて体外に排泄されるというものです。理論的には、摂取カロリーが消費カロリーよりも少なければやせます。分かっていても、食欲を抑えることは並大抵ではありません。そこで、食事制限がつらい人は、普通の食事の代わりに寒天を食べて満腹感を得て摂取カロリーを少なくし、ついでに脂肪分も吸収されないようにするということですから、すばらしい理論です。でも、最近はほとんどこの話は聞かなくなりました。
平成16年は「にがりダイエット」の年だったようです。私は全く知らず、これも通院する患者さんに教えてもらいました。「にがり」は、海水を濃縮したときの塩を除いた残留物で、その主成分は塩化マグネシウムだそうです。ネットで調べてみると、「糖の吸収を遅らせる」、「脂肪の吸収をブロックする」、「糖質代謝を促進する」、「エネルギー代謝を促進する」などといいことが書いてありますが、確かな根拠はありません。マグネシウムは、下剤として私たちも使いますので、大量に服用すると水分を失って体重は減るかもしれません。
いろいろなダイエット法が、次から次と出てくるのは、体重を減らしたい人がたくさんいるということです。そして、食べながらやせるというダイエット法では成功しないということです。食欲という人間の弱みに付け込んだ方法が、テレビ番組などで取り上げられると、すぐに飛びつく視聴者にも問題があります。人を信頼することは大事なことですが、自分が考えることを放棄して依存することとは違います。確かな判断力を持つことが必要です。
第54号より