平成23年の1年間で、胃内視鏡検査を1,599件行いました。12月28日、最後に行った人には、「○○さんが1,599人目でした。1,600人目の人には記念品を上げようと思っていたんですけど・・・・」と言いましたが、実は記念品は用意していませんでした。
開業以来どれくらい胃内視鏡検査を行ったのかを集計してみました。平成7年から17年間で約18,000件の検査を行っていました。最初の1年は600件程度でしたが、平成17年には約1,000件になっていました。平成23年に約1,600件ですので、この7年間で1.6倍に増えたことになります。平成18年に経鼻胃内視鏡に替えた後は約9,700件でしたので、経鼻に替えた後に検査件数が多くなっていることが分かります。ちなみに、大腸内視鏡検査は3,773件、腹部超音波検査は約16,000件でした。
年間1,599件の検査のうち、経鼻で行ったのが1,564件でした。口からの検査は35件でしたが、鼻が狭くてどうしても入らないから、前に鼻から入れた経験があるが口からの内視鏡の方が苦しくないからというのが理由でした。約98%の人が鼻から胃内視鏡検査を行っていることになります。ですから、今では胃内視鏡検査をいうと鼻からの内視鏡検査であると理解されています。
この中には、「内視鏡検査で死ぬ目に遭った」からと経鼻胃内視鏡を希望して受診した人たちがたくさんいます。「これくらいであれば、明日もう一度来てもいいですよ」という人は一人やふたりではありません。私も、「ラーメンができるよりも早く終わるんだから、年1回程度であれば、楽なもんでしょう」などと冗談を言いながら検査をしています。
昨年、神戸で開催された消化器内視鏡学会に出かけて知った新兵器を2つ導入しました。一つは新しい内視鏡システムです。実は2年前に新しいものに替えたのですが、学会で見た12月に発売される予定の新しい内視鏡システムは画像が細かく、しかも明るいのです。神戸で但馬牛のステーキを食べながら買うことを決めてしまいました。購入して再確認できましたが、これが優れもので、これまでよりも画像が明るく鮮明で細かいところまで観察することができます。
二つ目は送水器です。内視鏡検査中に胃の粘液や泡でよく見えないことがあります。これまでは、注射筒で水を吹きかけていましたが、勢いをつけて大量の水を吹きかける装置があったのです。これは私が知らないだけだったのですが、これは消化器がん検診学会の発表を聞いていて知ることができました。これを使うと胃の中の粘液や泡を簡単に流し去ることができますので、胃をきれいにして観察することができます。また、細い内視鏡はレンズが曇りやすい欠点があり、検査中にイライラすることがあるのですが、この装置で水を吹きかけることによりこの欠点はなくなりました。
新しい内視鏡装置と送水器という二つの新兵器を使うことで、快適に検査をすることができるようになりました。さらに診断能力が上がると思っています。ただ、胃の中に水を入れますので、これを吸引する時間が余計にかかります。実際は1分か2分程度なのですが、これまでと比べて検査の時間が長く感じるようです。丁寧に見ているのだと許してもらっています。
大腸内視鏡検査は、226件でした。多くは大腸がん検診で便に血液が混じっていると言われた人たちの精密検査で行ったものです。病気の種類によっては内視鏡を奥まで入れないことがありますが、100%目的部位まで入れることができました。しかも、痛いと口に出して言った人は2、3人しかいません。大腸内視鏡検査は痛いという噂がありますが、実際は痛みはほとんどないのです。入れたかどうか分からないで終わった人もいるのです。
内視鏡は年々進歩しています。ちょっと太いのですがハイビジョンで見ることもできます。経鼻胃内視鏡ではまだありませんので私は持っていません。できるだけ最新のシステムを使って、『早過ぎる死』を迎えないために早期に診断するようにしたいと思っています。
第73号より