7月11日に福島市で日本消化器がん検診学会東北地方会が開かれました。この学会は東北6県の人たちの集まりで、全国学会とは別に定期的に行われています。今回は胃がん検診に関するパネルディスカッションがあり、パネリストとして招かれました。弘前市で私たちが行っている胃がんリスク検診のことが県外にも伝わっていて、そのことについてディスカションしてきました。

弘前市では平成26年10月から胃がんリスク検診を行っています。リスク検診というのは、胃がんはピロリ菌の感染を基にして胃炎が進行しがんになる、というのが前提です。胃がんになりやすい人を見つけ出して検診を行うのが基本ですが、弘前市の場合は、ピロリ菌の感染者を見つけ出して早くピロリ菌をやっつけてしまい、将来の胃がんを予防しようということを主目的にしています。

ピロリ菌対策を市町村が住民に対して行うことに関しては、まだ議論があります。ただ、はっきりしていることは、ピロリ菌に感染していない人は胃がんが非常に少なく、胃がんの人はピロリ菌に感染していることが圧倒的に多いという事実です。全国的にみても行っている市町村は少なく、弘前市の場合もまだ始めたばかりですが、途中経過を発表してきました。

年度途中での開始で、約9,800人が対象で受診者は約1,400人でした。弘前市は胃がんで亡くなる人が年間96人います。男が女の1.4倍と男性が多いのですが、リスク検診を受けたのは女性が70%でした。感染率は男女とも同じ比率でした。つまり、ピロリ菌が発症原因としては重要ですが、塩分など生活習慣が胃がんの発症に大きく関わっていることが、ここでも証明されました。

東北地方ではリスク検診を市町村が行うのは弘前市が最初です。そのためにパネリストとして招かれたのです。学会に参加している人たちはほとんどがリスク検診の必要性を認めている人たちでしたので、やりっ放しではなく、検診を受けた人たちをきちんと把握して行うことが重要だなど、方法についていろいろ議論をしてきました。

弘前市は、40歳、45歳、50歳、55歳の節目検診として行っています。対象年齢の人たちはぜひ受診をお願いいたします。

余談ですが、新幹線に乗り遅れた話をひとつ。7月10日は金曜日でしたので、午後に車で新青森駅まで行きました。新幹線に乗ろうとしたのですが、車内清掃中なので少し待って下さいとのことでした。ホームのベンチに座り、涼しい風の中で、雑誌を読み始めました。それも「胃がん検診に未来はあるか」という特集でした。つい読み込んでしまい、そのうちに音もなく何かが動いている気配がしました。なんと、新幹線が出発してしまったのです。緑の窓口の人は親切にも、追加料金なしで次の新幹線を手配してくれました。