- 診察を受けられない場合は状況をお知らせ下さい -
医師法第20条(無診察治療等の禁止)
「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方箋を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。」

医師法という私が従わなければならない法律の一条文を書きました。これは診察をしないで治療したり、薬を出したりしてはいけないということを明文化したものです。これまでも診察を受けずに薬だけをもらっていた人はたくさんいます。そして、私たちの医院だけでなく、他の医院や大きな病院からも同じように薬だけをもらってきた経験があると思います。しかし、これは本当は認められていないのです。診察しないで「今日は薬だけ下さい」というのは、法律に違反しているのです。 しかし、現実問題として、いろいろな事情で患者さん本人が診察を受けに来られない場合があります。でも、治療は続けなければいけません。診察を受けないで薬を出すのは医師法違反だからと薬を出さないで治療を中断するわけには行きません。

法律で決まっているから出せないのではありません。血圧を測らずに薬だけを飲んでいると、実は血圧が下がっていなかったとか、副作用がでているのに気がついていなかったということが起こります。コレステロールの薬を飲んでいても、体重も減らずコレステロール値も全く下がっていなかったということが起こります。薬をもらうもらわないの問題ではなく、診察をして治療がきちんとなされるということが大切なのです。そのために、長期間にわたり薬だけをもらうというのはいいことではないのです。生きていくために病気の治療をしているわけですから、皆さんの生活が優先します。ただ、長い目で見て現在の生活を犠牲にしてでも入院したり、通院しなければならないことがあります。

皆さんの状況が全く分からずに薬だけを出すよりも、患者さん本人が来院できない場合は薬を取りに来た家族の人が必ず状況をお知らせ下さい。 以前と変わりがない場合でもそのようにお知らせ下さい。それをカルテに書きとめておきます。場合によっては何か助言をします。これが法律違反かどうかはともかくとして、病気の治療をするといっても、皆さんの生活があってのことですので、都合の悪い方には薬だけでも私は出します。しかし、患者さんの状況が分からずに薬だけを続けることは患者さん自身のためにはよくありません。私が安心して治療を続けられるためにも状況をお知らせ下さい。