東北地方を襲った台風10号は大きな被害を残して過ぎ去った。8月30日夜に青森県を直撃し、西海岸に抜けるという天気予報だった。平成23年の東日本大震災の後、沢田内科医院では、停電に備えて大型の発電機を備えた。定期的に発電の試運転をして十分に保守点検を行ってきたが、幸いなことにこれまで一度も使うことはなかった。
今回の予報は停電を予感させた。いつ停電になっても支障がないように、朝の診療前にちょっとスイッチを入れて、問題なく動くことは確認していた。台風が近づいてきた夜、井上真利子婦長と夜勤の当番だった舘下麻奈美さんと3人で、暗くなった元の車庫に懐中電灯を持って入った。手順どおりにスイッチ類をONにし、発電のキーをひねると発電機は始動した。排ガスは車庫のシャッターを開けなければ、外へは排気できない。電動シャッターのコンセントを発電機のコンセントに移すとシャッターは開いた。これで発電機からの電気でシャッターが動くことが確認できた。
沢田内科医院で用意している発電機はちょっとした物ではない。発電量は、レントゲン写真は撮れないが、外来のレセコンはもちろん、内視鏡検査もできるくらいである。もちろん、近所の人が携帯の充電ができなくて困っている場合でも、十分に対応できます。ただ、こんなに困っている場合には、外来診療どころではありません。悠長に胃内視鏡検査などをやっている場合ではありません。しかし、災害に襲われた時こそ、医療機関としての役割が果たせるようにすること、他の医療機関で電源がないためにできないことを一時的に代わってやること、このために発電容量が大きい発電機を用意しました。
この発電機は緊急用ですので、使わないに越したことはありません。このまま使わないで廃棄処分になることが最も望ましいことです。あっても使わない可能性が強いわけですが、準備しておくだけで安心できます。発電機だけでなく、めったに使わないがなければ困る薬など、医療機関では結果的に無駄になることがたくさんあります。
第95号より